5.21.2009
無言の面会、白紙の遺書、祝福 「休暇 」
死刑がどのように執り行われるのか、 外国映画では たまに見るが、 日本ではどうなのか ほとんど知らない。 この作品が取材を重ねての映像化であるなら興味深いものがある。 執行の日程は当日まで死刑囚には知らされず、 内部職員に通達された後も当人には感づかれないように計らわれるのだ。 そして休暇とは、 執行における最も嫌な役目である "支え役" を務めた職員に与えられる1週間の報償あるいは 'ねぎらい' なのだ。
男がどんな罪で収監されたのかなどの説明は一切ない。 面会に来るのはお仕着せがましい弁護士と妹くらい。 妹は何も話さず、 兄も何も言わない。 どうやら死刑囚のようだ。 男はそれ以外の時間、 ずっと鉛筆画を書いて過ごしている。 かたや刑務所職員の一人は もうすぐ結婚する。 かなりの晩婚で、 相手は6才の男の子を連れた再婚者。 時間が飛び飛びに編集されているので、 冒頭は子連れ新婚旅行から始まるのだが、 当然ながら新婚には見えず後でわかるのだが、 それより、 その旅行のための休暇こそ、 死刑執行で得たものという皮肉なプロットになっている。
映画は淡々と進む。 そのくせ求心力は強く、 ぐいぐい引き込まれる。 職員同士の人間関係、 職員と受刑者の関係も淡々とながら興味深く描かれる。 100%事務的に執行できるなら こんな苦痛は生まれないだろう。 たまに言葉を交わし、 まったくの他人でもなくなった者を、 その朝 部屋から連れだし、 神父の言葉を聞かせ (やっぱり神父なのか) 最後の一服をすすめ、 そして遺書を書かせる。 男はペンを取るが、 職員が見つめるなかで、 あるいは見ていなくても何も書けない。
'支え役' を買って出たことを友人の職員が咎めるが、 この仕事で食ってるんだ、 と言い返す。 単純な死刑批判ではない物語は奥が深く、 役者たちの遠くを見るような目もいい。 監督の前作 「机の隅」 も面白かったが、 これも秀作。 今後も注目したい監督だ。
休暇 (2008日本) 公式サイト&予告編
監督 門井肇 脚本 佐向大 原作 吉村昭
小林薫 西島秀俊 大塚寧々 今宿麻美 柏原収史 大杉蓮
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