4.06.2009

戦友 「ローリング・サンダー」



こんどのカンヌでは、 タランティーノの戦争物がお披露目になるそうだが、 その予習の意味でも、 彼が版権を持っているとまで噂され、 それゆえに いまだDVD化されないこの作品を、 VHSの寂れた映像で今一度見てみた。

70年代・・ 切ない時代だ。 ヌーベルバーグもニューシネマも終わり、 すべてが後の祭りであるかのような。 ベトナムから帰った二人の兵士を故郷の街は名誉で迎えるが、 二人は浮かない顔。 それもそのはず、 彼らはずっと敵の捕虜となっていたのだ。 チャールズの妻は、 夫は死んだものと思って別の男と結婚直前。 小学生になる息子は、 1歳半のとき以来なので父の記憶はなく、 キャッチボールの相手をするのはもっぱら母の恋人。 それでも息子を思う父であったが、 ある日、 恩給目当ての強盗が愛する二人をいとも簡単に奪ってしまう。 敵の拷問にも無傷だった男は、 自国の人間によって右手をディスポーザーで砕かれてしまう。

タクシードライバー」 は大好きな作品だが、 同じシュレイダー脚本でありながら、 こちらは地味な演出。 フック船長のような手になった男が無気力に過ごす日々が虚しく長く描かれ、 復讐劇はラスト30分に集約される。 チャールズは戦友ジョニーを訪ねる。 奴らは売春宿に、 その一言で友は銃を手に同行する。

二人は軍服を着て、 帰還祝いにもらった赤いキャデラックのコンバーチブルで乗りつける。 奇しくも日本車がアメリカで売れ出した時代、 それは最後のアメリカ車と言われた。 二人は電気を帯びた雲のごとく雷鳴を轟かせ、 自分たちだけの戦争をやり直すかのように稲光を放つ。


ローリング・サンダー ROLLING THUNDER (1977) 日本公開1978 
監督 ジョン・フリン 脚本 ポール・シュレイダー 
ウィリアム・ディヴェイン トミー・リー・ジョーンズ 

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