11.17.2008
和製トリュフォーが歌う 「愛の予感」
「クロージング・タイム」 「ブートレグ」 「バッシング」 に続く小林政広監督最新作。 フォーク歌手→郵便局員→ピンク映画と一風変わった経歴をお持ちの監督、 あえて和製トリュフォー^ ^と呼ばせてもらおう。 » 監督インタビュー記事
14歳の少女がインターネットに絡んで、 同じく14歳の少女を刺殺。 映画は双方の親に話を聞くというところからドキュメンタリータッチで始まる。 あざとく時代にコミットしたかと思えば、 社会的問題提起はあっさりと放棄。 娘はともに片親で、 加害者の母と被害者の父の関係だけを延々と追う。
ダルデンヌ兄弟の 「息子のまなざし」 を彷彿とさせるが、 怨み、 憎しみを愛にまで変えてしまうのが和製トリュフォー流と言えるだろう。
舞台はすぐに1年後の北海道に移るが、 この瞬間にプロットは読めてしまった気がする。 しかしながらそれ以降、 映画は徹底して、 労働、 めし、 労働、 風呂、 めし、 労働という '終わりなき日常' を確信犯的にリピート。 労働者の宿泊施設とその厨房で二人は日々をともにするが、 この間、 男はいつも背中を丸め、 女はうつむいたまま。 セリフは一切なし。 やがて、 ようやく変化が起き始めるが、 変化の表現は男の食欲が増すとか、 女の歩き方が堂々とする程度に留められている。 反対の立場に思えた両者は、 実はともに大きな喪失を共有する関係であり、 それは '許し'、 そして愛へとつながる関係であると描いてみせる。
エンディングには "人は愛するだけで生きていける" と歌う監督自作の曲が流れ、 絶賛してみたいような、 キツネにつままれたような、 不思議な感慨の残る映画。 監督自らが主演し、 対する加害者の母役に渡辺真起子。 一昔前、 CMなどによく出ていたのを知っているが、 微妙なポジショニングの女優さんになったものだなあ。
苦言を呈するなら、 画面上にはどちらの娘も登場させないことで上記のトリックが可能なのだ。 実際には一人の娘はすでこの世にいないが、 もう一人は生きているので大変であろうとも更正することができる。 時間が経つにつれ、 この男と女は分かれ道にさしかかるのではないだろうか。 それとも男が、 我が娘を殺した少女を自分の娘として受け入れるところまで話を発展させてみるか。 。 シネアスト必見^ ^
タイトルは妙にベタだなあ。 。
愛の予感 the REBIRTH (2007日本) 公式サイト&トレーラー
監督 小林政広 *ロカルノ映画祭グランプリ
小林政広 渡辺真起子
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