8.12.2008

人の計画を神は笑う 「アモーレス・ペロス」



アモーレス・ペロス Amores Perros (1999メキシコ) 日本公開2002
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ初監督 
エミリオ・エチェバリア ガエル・ガルシア・ベルナル 
*東京国際映画祭グランプリ・監督賞 

「21グラム」 「バベル」 は素晴らしかったし、 早くも製作総指揮に回った 「美しい人」 は自分のなかでもかなりの高評価だが、 こともあろうにイニャリトゥ初監督のこの作品だけ見逃していた。 知り合いのラティーノ好きの女性に "これは私の人生ナンバーワン" と言われ、 あわてて見たしだい。 彼女が大好きなベルナルのデビュー作でもある。

特殊な '構成' のことを今さら話す必要はないもしれない。 無関係な3つのエピソードがわずかな現実上の接点を持って交錯する。 しかしながらこれを結んだところに現れる、 神の視点で描かれた映画。 この作品はそう捉えることもできる。

各エピソードはそれぞれに濃密で完成度が高いのに、 それらを3つジョイントしてしまったのだから2時間半の長丁場になってしかり。 だが決して若くない監督デビュー作には、 これぐらいの力業が必要だったのだろう。 それでもDVDではカットされた部分もあるということで、 それについてはとくに詮索しないことにする。 タイトルの訳は "犬の愛"。 人間のペットである犬、 あるいは神の飼い犬である人間・・ 兄と弟の確執は 'カインとアベル' の引用として解釈されているようだ。

こう書くと何か難しそうな作品に思えるが、 まったくそんなことはない。 展開の読めないストーリー、 希望と血が流れ、 挫折と愛が飛び散る映画らしい映画なのだ。 彼女に紹介されたときは何となくもっと '素敵' な映画をイメージしていたが、 なかなかどうして渋いナンバーワンだ。 でも自分のナンバーワンを語ることは、 その人の本性を知らせてしまう、 ある意味 危険な行為だ! 今後は個人情報保護法に盛り込むべきだろう^^




冒頭の事故シーンはもちろん、 闘犬のシーンなんか物珍しさもあってグイグイ引き込まれるが、 これでも生々しさを抑えたのだそうだ。 しかし犬は、 やっぱり本当に死んでいるように見える・・ 学校から帰ると赤ん坊を抱く高校生の妻、 レジのバイトと強盗を掛け持ちする夫、 ホームレス風の男は実は・・! これ以上書くとネタバレになってしまうな。 。 兄と弟、 父と娘は血がつながっているのに、 母と娘は義理の親子あるいは叔母と姪であり、 父と息子が登場しないのはなぜだろう。

そしてスペインのモデルがフローリングの床を踏み抜いた後も、 床の穴がずっとそのままになっていたのはなぜだろう。 修理の費用がないからという話だったが、 それは口実にすぎないのではないか。 このように何となくそうなってしまっていることのなかに、 実は神の意志があるのかもしれない。 けしかけられる闘犬のように哀れな存在、 それが人間なのだ。

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2 コメント:

umetraman さんのコメント...

イニャリトゥ監督は複数の話を並行して描くの最初からやってたのですね。
『バベル』しか観てないもので。凛子さんの・・・が強烈過ぎて目が眩みました。
しかしレビューを読んでなんだか興味沸いてきましたよ。ガルシア君デビューですな。
それからすみません、自分のナバーワンよく語ってます。個人情報漏洩しまくりです(笑;。
ガツンと応援♪

kiona さんのコメント...

>umetraman さん
凜子さんは今どきめずらしく根性入ってますね。

自分のナンバーワンもこの際、あえて取り上げてみようかなと思っています。笑われそうな気もしますが・・ またまたコメントありがとうございました!!