7.06.2008

ベルトとサスペンダー 「クライマーズ・ハイ」


 
日航機墜落の謎を追う、 とかいう話ではない。 その事故が起きた日々、 地方紙のデスクをつとめた一人の男と正統派ジャーナリズムの気骨を今に問う物語なのだ。

斜陽と言われる新聞。 そこにはどんな人がいて、 どんな日々があったのか。 記者、 あるいは広告営業、 販売、 そして経営・・ 誰でもが簡単にブログを開設できる今だからこそ、 プロの仕事ぶりを見ておくのも意味があるだろう。 そして地方紙のあり方。 ニューヨークタイムズだって考えてみれば地方紙なのだ。

男は若い頃、 スター記者と持てはやされ全国紙からも引き抜きの声がかかったが、 それを蹴って地方紙に残る。 ジャーナリズムはロッククライミングと同じ、 手がかり、 足がかりをしっかりとつかみ、 一歩一歩確実に登れ。 そう語る男だが、 そもそも記者を目指したのは子供の頃に見た映画の、 サスペンダーの男に憧れたからと可愛い。 映画の中の記者はいつも、 ベルトがあるのにサスペンダーをする。 その心は 'ダブルチェック'、 つまりスクープには裏付けこそが重要だと説く。

地元での大惨事の発生とともに "全権" に任命され記者魂に再び火が付くが、 この燃える男は周りとの衝突、 あるいは経営陣との衝突を繰り返す。 自分の信じるやり方で燃えれば燃えるほど、 水を差す者、 邪魔をする者が現れる。 このへんはジャーナリストでなくとも会社員をやったことのある人なら痛切にわかるのではないだろうか。 それでも連日の一面トップ。 しかし本当はいったい誰のために新聞を作らなくてはいけないのか、 その大きな問いを自分自身に投げかけることとなる。

原作は 「半落ち」 の横山秀夫、 テレビシリーズから3年経っての映画化ではあるが、 監督は原田眞人。 「バウンス ko GALS」 が自分的には大ヒットだったのでそれ以来いつも注目しているが 「ラストサムライ」 に出演してみたり 「伝染歌」 「魍魎の匣」 と最近ではホラーも撮ったりしている不思議な人。 本作ではたっぷり本領を発揮したと見た。


クライマーズ・ハイ (2008日本) 7/5〜 公式サイト&予告 
原作 横山秀夫 監督 原田眞人 
堤真一 堺雅人 遠藤憲一 田口トモロヲ 尾野真千子 でんでん 
高嶋政宏 山崎努
アフタースクール 告発のとき キネマ旬報 2008年 11/15号 [雑誌] ハプニング (特別編) ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌 スタンダード・エディション

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