3.22.2011

可能性と青いペンキ 「ブルーバレンタイン」



中絶手術に際しての質問でシンディは、 初体験13才、 これまでの相手は20人、 いや25人かなと答える。 13才については平均的とカウンセラーにコメントされ、 25人については何もコメントされない。

ウクレレとタップダンスの下のトレーラー、 これを見た瞬間にやられてしまって、 早く見たかったが、 ついに見た。 素晴らしい! 現時点で堂々の今年ナンバーワンだ。 世界最遅の日本公開が来月に迫る中、 一足だけでも早く見れてよかった^ ^

(500日) のサマー」 のように、 まぶしい恋の始まりと切ない終わりが対比されているが、 結婚や出産がからんで、 さらにシリアス。 結婚してすぐに生まれた娘が5~6才になるくらいの年月、 神の前で誓った永遠の愛も、 そのくらいしか持たなかったのだ。 時間の対比はテロップなどではなく、 少し太ったシンディと、 ディーンの後退した額で表現される。 これがなかなか見事で、 若かりし日のシンディは初々しく、 疲れた現在とコントラストもくっきり。 若かりしディーンの自信過剰気味のハイテンションさが年月を経て、 どこかのボヤキ漫才師のようにヨレヨレっとしてくる。 老けたディーンの髪型は監督自身のポートレートにも見える。

しかし輝かしい青春も重苦しい現在も、 どのシーンも美しく、 演出の基本、 シナリオの構成も緻密に練られていて思わず画面に引き込まれる。 それでもまだこの恋を終わらせるわけにはいかない、 娘を自分のように離婚家庭で育てたくないと願うディーンは、 最後の最後まで もがく。 果たして愛は帰ってくるのか。

シンディは上の質問のとおり、 あまたの男をそそる美人だが、 理系な感性も持っていて医者志望。 中流家庭で平均的に育てられるが、 ズレた笑いのセンスをしている。 一方のディーンは10才の時に母が家を出て、 父は用務員でアマチュアミュージシャン、 高校を中退して今は引っ越し屋のバイトをしている。 住んでいる町も離れた二人は、 ホームに移ることになった老紳士や '車椅子のスモーカー' ことシンディの祖母がキューピッドとなって結ばれる。

ディーンがシンディの家に結婚の挨拶に来るシーンでは、 二人の背景はよりいっそうの対比を強めることになる。 ある意味では現代版 「ロミオとジュリエット」 かもしれないが、 それ以上に男と女という大前提での対比も上手く描かれていて、 誰しも感情移入せずにはいられない映画版 "あの素晴らしい愛をもう一度" とも言える。 またラスト近く、 ディーンがシンディの勤める病院へ現れる下りは多少演劇的でもあり、 よくできたTVコメディのようでもある。

シンディが描いた夢のシナリオどおりに、 歌や絵の才能と 無限だった可能性を開花させることのないディーン、 引っ越し屋から現在は塗装屋となり、 手には青いペンキがこびり付いている。 "家族のために戦う" 男は、 しかし もうあの頃のように社会の壁を乗り越えることができないかもしれない。 いつまでも子供のような男だから、 子供との付き合いだけは上手いが。

ミシュル・ウィリアムズは今回、 かなりの汚れシーンまでを熱演、 ライアン・ゴズリングの役者ぶりにも目を見張らされた。 二人はプロデュースにも参画しているから、 思い入れもひとしおだったことだろう。 ただのラブストーリーと言ってしまえばそれまでだが、 身につまされるようなエピソードも多々あり。 ひときわ苦いペーソスと、 とびっきりスイートなロマンチシズムが入り交じった濃厚な110分。 この春一番のお薦め!




ブルーバレンタイン Blue Valentine (2010) 日本公開2011.4/23 公式サイト 
脚本・監督 デレク・シアンフランス  象のロケット 
ライアン・ゴズリング ミシェル・ウィリアムズ 
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