2.26.2010
失ったしっぽ 「ファンタスティック Mr. FOX」
ウェス・アンダーソン監督の新作は人形アニメ。 これを面白いと思うか、 アンダーソンよ お前もかと感じるかは見る人しだいだろう。 奇想天外な何かがあるのではという予想に反して普通のアニメだったが、 普通のアニメと思ってみれば一味もふた味も変わっているのかもしれない。
「かいじゅうたちのいるところ」 のように、 キツネやその他の動物の毛並みが印象的で、 ブルブルっと震える感じが右脳の片隅に残る。 '野生' 'ワイルド' というキーワードが意味深に隠されている気もする。
だが物語的には ごく普通で、 結婚して一児を持ったキツネ・パパはある日、 野心を再燃させる。 穴ぐらを出て高台に家を買い、 お金に困る生活はイヤだと、 このあたりを牛耳る農夫たちの家畜やリンゴ酒強奪作戦を決行。 その結果、 農夫たちと対立することになるが、 さまざまな動物たちの個性あるいは特性を生かした '野生' の爆発によって、 したたかにサバイバルを果たすというもの。
農夫から見ればただの泥棒キツネ狩り、 動物たちから見れば、 虐げられた者による世界の奪還。 それを擬人法によって展開するのだから、 たいていの動物アニメと同様に最初から自己矛盾をはらんでいる。 あるいは人間対野生というより、持てる者対持たざる者なのかもしれない。 パパは戦闘の途中でしっぽを失い、 農夫がそれをネクタイにしてテレビに出るという一幕がある。
動物たちの間にもさまざまな嫉妬や懐疑があり、 事なかれ主義の多くの者は最初はキツネ・パパを責める。 だがキツネ・パパは独特のテンションでリーダーシップを発揮、 みんなを闘争に導いてゆくが完全なビジョンがあるわけでもなかった。 破れかぶれの結果オーライ。 危うい この世界を写し取っただけということかもしれない。
ディテールや各論のアイディアはそれなりに冴えていると言える。 勢いのある進行に圧倒されて一気に見れる。 初期のアンダーソン作品のように。 だがなぜか野生を解放しても閉塞感を取り払うことはできず、 こんなことを繰り返して世界は終わっていく、 やっと逃げ延びた場所にも希望はなかった・・ 昔の悲観的なSFを見た後のような、 そんな気分にさせられるのはなぜだろう。 失ったしっぽが再び生えてくることはないのだと再確認させられただけ。 そんなふうにも思える。
ファンタスティック Mr. FOX Fantastic Mr. Fox
(2009アメリカ・イギリス) 日本公開2011.3/19 公式サイト 象のロケット
監督 ウェス・アンダーソン 原作 ロアルド・ダール
声 ジョージ・クルーニー メリル・ストリープ ビル・マーレイ ウィレム・デフォー
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