6.24.2009

スパイク・リーの戦争 「セントアンナの奇跡」



ひさびさのスパイク・リー・ジョイントだが、 今回は純然たる戦争映画。 しかも2時間40分と長丁場。 イタリアのトスカーナ地方での、 米軍とドイツ軍の攻防が描かれる。 と言っても第二次大戦末期のローカルな作戦の一つに過ぎないと思われ、 地味な歩兵たちのやりとりは古い戦争映画でも見ているような気分になるが、 そんなところも、 心待ちにしているタランティーノの Inglourious Basterds などと合わせて戦争映画復興の新たな視点としてのシンクロニシティを感じる。 大砲や手榴弾によって もげる手足、 道に横たわる死体などは妙にリアルだし、 銃弾の嵐の中で流れ出ている自らの血を確認して初めて撃たれたことを知るかように、 どこか人ごとのように進んでいく戦争。

黒人部隊を迎え撃つのは銃弾だけではない。 白人上官の差別意識は命がけの侵攻を無にするし、 ドイツ軍は放送によっても攻撃してくる。 ナチ版 東京ローズと言われるアクシス・サリーの妖艶な声は "なぜ あなたたちを奴隷として扱う国のために戦うの?" とのメッセージで撹乱する。

そして攻防のまっただ中に現れた少年。 彼を救出し逃げ込んだイタリアの村は、 信仰心は厚いが差別意識がなく、 黒人兵達は敵地において 予想もしなかった安息の時間を過ごす。 逃亡したドイツ将校、 パルチザンの裏切り者・・ 敵と味方はいつしか、 自分としていられる心の状態に還元され、 英語、 イタリア語、 ドイツ語の祈りがシンクロする。

"奇跡" と定義したものが何だったのか、 いまいちフォーカスされていない気がするし、 2時間越えは やはり長かったが、 ヴァレンティナ・チェルヴィがイタズラっぽくヘルメットをかぶり 銃を肩に掛けて、 いま黒人兵と寝た部屋から出てくるシーンは印象的だった。



セントアンナの奇跡 MIRACLE AT ST. ANNA (2008) 日本公開7/25
監督 スパイク・リー 原作・脚本 ジェームズ・マクブライド 公式サイト&予告 
デレク・ルーク マイケル・イーリー ラズ・アロンソ 
オマー・ベンソン・ミラー ヴァレンティナ・チェルヴィ 

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