6.23.2009
捧げてはいけない 「ボーダータウン」
"殺され行方不明になったフアレスの女性たちに捧ぐ" って言ってるんだが、 捧げていいもんかね。 。 5000人がレイプされ殺されてるのに、 アメリカ・メキシコがグルになって隠蔽してたらしい。 進行が何かギクシャクして伝わって来ないんだが、 いずれにせよ映画化された時点で過去の事実となっているはずで、 問題を表面化させるというようなジャーナリスティックな役割は映画にはないはず。 ならば、 もっと掘り下げた解釈を提示して再発防止に貢献するのでなければ "捧ぐ" ことにはならないのではないか。
メキシコのアメリカとの国境近くの町フアレス。 近年ここには工場が建ち並び、 安い労働力を使ってパソコンモニターなどを製造し、 アメリカに輸出している。 本編中で "奴隷貿易" と呼ばれる NAFTA (北米自由貿易協定) が背景となっていて、 協定を中南米にまで広げることを目論む者たちによって事件が隠蔽されている。 警察もその手先で、 捜査するより隠蔽したほうがコストが低い、 という説明がされている。 しかし安い労働力を求めて生産地が移動するのはグローバリゼーションの常だろうし、 犯罪をなくして労働環境を整備したほうが '悪者' にとっても好都合なのではないか。
ここへ送られたのはメキシコ出身のジャーナリスト (ロペス) で、 キャリアを優先したため未だ独身ということだが、 地元の記者 (バンデラス) は妻も子どももいる。 ローカルなジャーナリズムへの侮蔑が感じられなくもない。 そしてこの二人はかつての恋人か何かのようで中途半端はラブストーリーがからむが、 どうでもいい要素だ。 最終的に記事は、 ロペスを取材に送り込んだアメリカの新聞にも握りつぶされるが、 それならそもそも なぜこの事件を取材に行かせたのか。 それも解せない部分だ。
レイプされ埋められるが、 息を吹き返して逃げてきた少女に出くわすロペス。 来て早々、 あまりにも おいしい展開。 ロペスは幼少の頃の辛い記憶を重ね、 彼女を守ろうとするのはいいが、 危険な おとり捜査を買って出るというのもイージーな展開という気がする。 さらには工場のオーナーに色仕掛けで接近。 一記者がここまでスパイエージェントになってしまうと、 もう社会派ドラマとしては見れなくなってしまう。 そのくせラストはドキュメンタリー風の事後報告になっていて、 ここで上記の "捧ぐ" と結ばれるわけだが、 ひねた自分じゃなくても、 たいていの人が偽善的な匂いを感じ取ってしまうのではないだろうか。
ロペスはジャーナリストとしても女性としてもあまり魅力的には見えず、 色男バンデラスは今回モジャモジャ頭の冴えない風体で、 狙ったつもりだろうが浅いセンス。 どこまでが事実かはわからないが、 搾取され悲惨な目に合っている人々がいるのは事実だろう。 だからこそ、 こういうご都合主義な作り方をしてはいけないのではないか。 残念な作品だ。
ボーダータウン 報道されない殺人者 BORDERTOWN (2006) 日本公開2008
製作・監督 グレゴリー・ナヴァ 公式サイト閉鎖
ジェニファー・ロペス アントニオ・バンデラス マヤ・サパタ マーティン・シーン
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