シネマ走り書き: 裏･牧歌的　｢ハックル｣

11.08.2008

裏･牧歌的　｢ハックル｣

きのうの｢タクシデルミア｣に続いて､ハンガリー国内の賞を総なめにしたというジョルジさんのデビュー作｡ hukkle というのはハンガリー語で 'しゃっくり' のことだそうで､そう言われれば日本語とも響きが似ている｡ "しゃっくり一つで､世界がひっくりかえる" などというコピーに反して､世界はひっくり返りも 'しゃっくり' 返りもしないのだが｡

農村の暮らしを切り取ったドキュメンタリーのようだ｡ただし言葉のないドキュメンタリー｡人々の営みを､顕微鏡と望遠鏡の両用メガネで､あるいはガラガラヘビやコウノトリの視点で見ているような感覚｡そこに映し出された不思議な生き物は､黙々と機械を動かすが何もしゃべらず､言葉を発するのは無線機やテレビのみ｡静かな世界を振動させる出来事が唐突に訪れ､それでも日常にさしたる変化は訪れず､死が訪れるまでのしばしの間､まどろんでいるかのような生｡

最後に結婚式で歌われる歌だけが高らかに人々の心に響き､それでも爺さんのしゃっくりは止まらない｡

意外に淡々としていて拍子抜けしたが､これがハンガリーで受け入れられたということは考察に値する｡ "牧歌的" という形容詞のジアザーサイドを見た思いだ｡