12.08.2010

同業のよしみで・・ 「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」



原題はシンプルに '復讐' なのに、 恥ずかしいまでに作り込んだ邦題。 このタイトルでは話題にできないでしょ^ ^ 奇しくも今夜は雨の夜でもあり取りい出して見てみたところ、 雨は最初のシーンと中盤で少しだけ、 復讐のシーンに雨は降らない^ ^ ハードな香港ノワールかと思っていたら、 意外に静かな作品。 むしろ まったり見る映画とも言える。

殺し屋の仁義と男の友情に、 オヤジ版 「私の頭の中の消しゴム」 を入れたようなストーリー。 娘や孫を殺された男は復讐のために殺し屋を雇う。 雇うと言ってもビジネスライクな依頼ではなく、 たまたま殺しの現場に鉢合わせした相手にピンときて、 金はもちろん家や 経営するレストランなど全財産を報酬に復讐を依頼する。 この男気に殺し屋も受けざるを得なくなり、 受けた以上、 それがどんな事態となっても全うする。 それが男というもんだ。

しかし復讐オヤジも実はかつて同業者であり、 そのときに受けた弾丸が頭に残っているため、 記憶が失われていく。 やがて何のための復讐かさえ わからなくなってしまうが、 それでも復讐は全うされなければならない。 なぜなら仇を取ると、 娘に約束したのだから。 そして復讐の相手も同業者とわかる。 バーベキューの最中に押し掛けるが、 子供がいたので近くのテーブルで待機する。 その間、 仇の殺し屋からバーベキューの差し入れがあったりするが、 それでも仇は仇・・

紙資源の再処理場というエコな?ロケーションで展開する小派手な銃撃戦、 服に貼られたシールをターゲットとするなどの よくわからないアイディア、 繁華街でかなりの時間 撃ち合うも警察は現れもしない静けさ、 何かと言えばスローモーション・・ このへんが見せ場か。 十数人子供を産みまくっている "ビッグママ" というのが出てきて、 肝っ玉母さんなのはいいが子供たちも復讐に参戦させる。 仁義と友情と愛があれば他は何でもあり。 このあたりが香港ノワールの醍醐味だ^ ^


冷たい雨に撃て、約束の銃弾を Vengeance/復仇 (2010フランス・香港)
監督 ジョニー・トー  公式サイト 象のロケット 
ジョニー・アリディ サイモン・ヤム ミシェル・イェ 
アンソニー・ウォン ラム・カートン ラム・シュー 
冷たい雨に撃て、 約束の銃弾を [DVD][DVD]

息もできない [DVD] ローリング・サンダー HDニューマスター [DVD] 殺人犯 [DVD] ザ・ロード [DVD] フローズン・リバー [DVD]

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12.03.2010

You're dealing with Yakuza. 「アウトレイジ」



見逃した大物がDVDになる季節か、 本日はコレ。 何本かあると、 まずエグそうなのに手が伸びる自分だが、 その期待に十二分に応えてくれた^ ^ 北野作品のなかでは 「ソナチネ」 をナンバーワンに挙げる自分としては、 それ以降の海外賞で動員数の伸びたアート系の作品より、 やっぱコレだよコレという感じ。 以前のたけしの映画と言えば、 気持ちいいほど映画館はガラガラだったのが懐かしい。

本作は海外でコケたと聞いていたが、 納得。 カンヌでもヴェネチアでもやはりアート系が期待されていたのだろう。 そこへ、 ベタベタのやくざ映画を持って行ったのだから^ ^ そんなに何度も賞を取っても 'しょう' がない・・(´・ω・`) なら好きにやろう、 という気概?が感じられる。 画面は比較的普通で、 その代わりシナリオをしっかり練った。

映画の銃声はいつの頃からか、 バキューンからガツンという響きに変わった。 たけしの映画もその最たるものだ。 せっかくDVDだしと止めてコマ送りで見てみると、 暗闇での閃光はほんの一瞬、 銃口が光る同時に薬莢が飛び出している。 (上photo オールバックの男の顔の前にその軌跡) そのあと煙・・ 今回は銃以外にも、 さまざまな殺しの方のオンパレード。 わざわざ そんな殺し方をしなくても・・ と思わしめるまでに凝っている。 クルマから飛び出したのは撮影では人形のはずだが、 微妙に動いていたりする。 そんな部分に感銘を受けて本日のスチールは、 印象的な殺しのシーンばかりをスクリーンショットで並べてみた^ ^

ストーリーについてはあまり触れるわけにはいかないので、 キャラについて。 みんなそれぞれに いいヤクザっぷりだが、 椎名桔平、 加瀬亮がいい。 椎名は終始リラックスした態度の、 ある種 昔気質なヤクザで、 ニヤついた目の奥に破滅的な何かを秘めている。 加瀬は英語を話し、 ギャンブルや金融に強い起業家ヤクザ? 治外法権ということで大使館をカモにするのだが、 こんなことあり得るのだろうか。 。 エントリータイトルはその加瀬のセリフ。 "てめえ ヤクザと取引きしてんだろ?" 契約しないからとNHKから訴えられた人の心境か。 。 今は調子のいいジジイにしか見えない本家会長も何らかの手腕で のし上がって来たのだろうし、 若頭の三浦友和は意外な武器を使う。 昨日の兄弟は今日の敵、 明日の親子でさえも・・ 痛々しいシーンの数々はエグすぎて笑うしかない。

たけしの衣装は 「BROTHER」 からの山本耀司で、 最近はコレクションも見てないが やっぱりカッコいい。 鈴木慶一の音楽も微妙なところで光る。 そうして見終わってみたら、 世代交代の停滞した日本社会のようでもあった。 既得権にしがみついた老体は、 こうやって引退してもらうしかないのか。 。 つっぱっていた男が弱気になる瞬間があって、 それが予兆のように現れたら殺られるなんてところも感慨深い。



アウトレイジ (2010日本) 公式サイト 象のロケット 
脚本・監督・編集 北野武 音楽 鈴木慶一 
ビートたけし 椎名桔平 三浦友和 加瀬亮 柄本時生 塚本高史 しいなえいひ 
中野英雄 杉本哲太 石橋蓮司 國村隼 小日向文世 北村総一朗 

12.02.2010

ジェイとエレーンの・・ 「スカイライン」



LAの空に巨大な宇宙船が飛来し、 人類は地球外生命体の餌食になる・・ いわゆるそういう内容を比較的低予算で実現しているB級SCI-FI。 恐らくはDVDスルーになると思われるが、 もうすぐNASAから凄い発表があるらしいし、 前祝い?的に見てみた^ ^

エイリアンの造形はイマイチだが、 こいつらは人間の脳を食べるらしい。 。 夜釣りのように目映い光で人間を吸い寄せ、 光に見入られた人間は誘蛾灯に引き寄せられるがごとく・・ 高層ビルに取り残された数人は、 ヘリや船、 車での脱出を試みるが けっきょくどこへも行けず、 また当然ながら NISSAN スカイラインは出てこない^ ^ ドラマは ほとんどワン・シチュエーションで展開、 節約した予算はすべてCGに使ったもよう。 ほどなくスティルスが応戦して人類の勝利に見えたが・・。

母船自体が巨大のエイリアンなのか、 それに飲み込まれてからもけっこう引っ張る。 しかし結末の意味はイマイチ飲み込めない。 それなりに迫力はあるし、 瞬発的にドラマチックに見せようとするが、 背景の物語がないので説得力に欠ける。 そのくせ続編を作りたがっているようなエンディングで、 どうせやるなら、 もっと見たこともないもの、 聞いたこともない話をお願いしたい。 乞うご期待^ ^



スカイライン -征服- SKYLINE (2010) 日本公開2011.6/18~ 公式サイト 
監督 ストラウス bros  象のロケット 
エリック・バルフォー スコッティー・トンプソン デビッド・ザヤス 

12.01.2010

エスプレッソ2杯 「リミッツ・オブ・コントロール」



ジム・ジャームッシュ・・ この名前にピンとくるのは ある年代の人だけ。 今や知る人ぞ知るになってしまった感のあるフィルムメーカーの一人。 「ストレンジャー・ザン・パラダイス」 (1984) で登場、 あえてモノクロで撮るゴダールばりのスタイルにラウンジ・リザーズの音楽。 ほんとにカッコよかった。 ジャームッシュは一時は時の人で、 それからしだいに忘れられたが、 自分などに取っては映画をグッと引き寄せてくれた人。 オフビートあるいはユルさの元祖的存在、 忘れるわけにはいかない。

最近の写真を見たら、 すっかり白髪頭ながら それでもパンキッシュに逆立てているのには笑えたが、 本作品を見てもじゅうぶん健在じゃないか。 それしてもDVD化が遅かったな、 やっと見れた。 舞台はスペインで、 赤が印象的なスペインのインテリアや風景が味わえるが、 あいかわらずアンチアメリカで古い映画が好き、 というスタイルが滲む。 "最高の映画は見れなかった夢のようなもの"・・ そんな、 わかったような わからないようなフレーズも楽しめる^ ^

マッチ箱を交換し、 中に入っている暗号による指示を読んだら、 なぜだかいつも2杯頼むエスプレッソでその紙を飲み込み、 不思議な指示に関係するデジャヴを見たら、 指示どおりの来訪者が現れ、 またマッチ箱を交換し、 中の暗号を読み、 エスプレッソで・・ この繰り返しなのだ^ ^ 森田芳光監督の 「ときめきに死す」 のようなノリかと思われたが、 最後にミッションは遂行される。 そして暗殺のターゲットこそはアメリカンなのだ。

DVDパッケージは 「2001年」 のHALを思わせるし、 そんな指摘も見かけたが、 そこまで哲学的にも思えない^ ^ しょせん思わせぶりな連想ゲームでしかないのかもしれないが、 そうやって切り捨てるには味わい深すぎる。 透明のレインコート以外に衣装のないパス・デ・ラ・ウエルタ、 フラメンコの練習風景、 そして何よりこの男イザック・バンコレの顔。 なぜかグレース・ジョーンズを思い出す。 。

その昔 "スタイリッシュな映画" という言い方があった。 今はなぜだか そういう形容は少なくなったが、 ジャームッシュの古い映画に対する愛情は、 異国の電話ボックス、 当時の服装、 髪型、 タバコの吸い方・・ フィルムに刻まれた生活のディテールへのリスペクトなのかもしれない。 当時は当たり前だったファッションが時代とともにキッチュに変わることのおかしさ。 ジャームッシュのオフビート感覚のベースにあるのはそういうものかもしれない。 バンコレ演じる "孤独な男" が携帯電話を捨てさせるのも そんなことの象徴と言えるし、 タバコを吸うシーンのない映画なんて映画ではない。 クリープを入れないコーヒーのように。 。 そう言いたいだけなのかもしれない。

アメリカ人でありながらアンチアメリカな '孤高の' フィルムメーカーを、 確か今年のはじめに そんなテーマを掲げた当ブログの今年最後の月の一発めにエントリーできたことを嬉しく思う。 また時折り、 不思議な味わいの映画を引っさげて舞い戻ってほしい。



リミッツ・オブ・コントロール (2009アメリカ・日本) 公式サイト 象のロケット 
THE LIMITS OF CONTROL
監督 ジム・ジャームッシュ 撮影 クリストファー・ドイル 
イザック・バンコレ パス・デ・ラ・ウエルタ ティルダ・スウィントン 
工藤夕貴 ガエル・ガルシア・ベルナル ビル・マーレイ