3.03.2011

永久運動 FLIPPED



少年期物の代名詞のように言われる 「スタンド・バイ・ミー」 。 自分的にはあまり印象に残ってないのだが^ ^ このところ復活を果たしているロブ・ライナー監督の新作は予告でもオーラがあった。

小学校から中学へと進む年頃の男子と女子。 そこにはさまざまな機微があるわけだが、 客観的に見ても普通に いい映画。 だからと言って ありきたりな部分はどこにもなく、 "ハートランド Truly Moving Picture" にも選ばれている通り、 なかなかよかった。 たまにはこういう映画が回って来ないとね^ ^にもかかわらず日本公開未定。 海外では すでにDVD化されているというのに。 。

時代は50年代末、 タイトルの FLIP は "ひっくり返る" みたいな意味だが、 同じ出来事を、 男の子から見た視点と女の子からの視点で交互に語られる。 古き良き時代を描きながら、 しっかりと新しい手法が導入されているわけだ。 また最初は女の子のほうが積極的だったのが、 時間の経過とともに反転して、 やがて男の子が彼女のオンリーワンな価値、 あるいはシナリオから引っ張ると 'iridescent' (虹色) な魅力に気づいていく、 といった展開になっている。

少年ブライスは家族とともに新しい町に引っ越してくる。 お向かいさんとなった家の少女ジュリアナは少し変わっていた。 画家の父、 バンドをやっている兄らに囲まれる奔放さを見せながら、ブライスをファーストキスの相手と決め込む乙女心も秘めている^ ^ 一方のブライスはそんな彼女に面食らいながら、 学校では照れから気のないそぶり、 あるいはさらに反転して嫌いなフリ。 しかしむしろブライスの父親が、 彼女や彼女の家の手入れされていない庭を毛嫌いする。

ジュリは父さんが大好きで、 いつも父さんが絵を描いている横へ行っては話をする。 ブライスの家には母方の祖父がすむことになり、 ガンコそうに見えたジイさんが誰よりも先にジュリの良さを発見する。 古い世代が新しい世代に自然と何かを伝え、 父譲りの何かと母譲りの何かが常にコンフリクトしているかような自分自身の成長を助ける。

ある日、 いつも彼女が登っていた高い木が切られる。 全体を見渡して初めて見えてくるものがあるという父の言葉を確かめるように、 彼女はその上からの風景が好きだった。 父はジュリに あの木の絵を贈る。 彼女はブライスの祖父の助けで庭を再生し、 また彼女は、 知的障害を持つ父の弟にも初めて会う。

当時のアメリカのスクールアクティビティも興味深い。 科学フェアではジュリの出品した孵化する卵が人気を呼び、 また "バスケットボーイ" なるチャリティオークションが登場する。 男子がランチの入ったバスケットとともに壇上で競りにかけられる。 それを10ドルや20ドルで競り落とした女子は、 その男子と一緒にランチタイムを楽しめるというもの。 え、 進んでたんだな・・ なんて^ ^ ブライスは誰もがうらやむ女子から50ドルの高値で競り落とされるが・・

遅まきながらブライスの家族はジュリの家族を夕食に招待する。 しかし その前にあったことのせいで、 二人は口をきかない。 何かを背負っている大人、 あるいは何かを捨ててきた大人と、 若い可能性が一同に会する。 その ぎこちない空気をカメラは巧みに写し取り、 その夜を通過して それぞれが新しい明日へと向かう。

上のポスターのように二人が並んで木の上に座るシーンは実際にはないが、 二人が植えた新しい苗木はいつかそんなシーンになる、 そういうことなのだろう。 お薦め!




FLIPPED (2010) 日本公開未定 
監督 ロブ・ライナー 原作 ウェンデリン・V・ドラーネン 
マデリン・キャロル カラン・マッコーリフ ケビン・ワイズマン 
ジョン・マホーニー レベッカ・デモーネイ ペネロープ・アン・ミラー 
アンソニー・エドワーズ 

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