5.17.2010

双子の一人っ子 「月に囚われた男」



最近はホラーもマンネリ気味だし、 渋いSFなんか見たいなあと思っていたところにコレが登場。 DVDリリースはまだ少し先のタイミングだが、 評判もいいし、 監督はデビッド・ボウイのご子息さんであるし、 興奮気味の鑑賞となったことを記録しておこう。

地球からは永遠に見ることのできない月の裏側、 ここに次世代クリーンエネルギーの資源がみつかる。 これをいち早く事業化したルナ・インダストリーズという企業に雇われて発掘作業をする男。 月面の基地に一人っきりで、 HALのようなコンピュータだけをパートナーに3年契約でここに滞在する。 孤独に植物に水をやるシーンなどでは名作 「サイレント・ランニング」 が思い出されたりするが、 そんなシーンの直後、 幽霊を見る。 自分しかいないはずのステーションに人影を見るのだ。 そしてそれは女性らしき姿。 「惑星ソラリス」 なのか? さすがボウイの息子、 渋い線を狙うんだなと思いながら、 名作の影に微妙に戸惑いながらも、 さあそうなるんだ、 と。 以下 多少ネタバレ・・

しかし物語はソラリスへは行かず、 次に現れるのは もう一人の自分。 クローンか、 ドッペルゲンガーか?! オマージュを散らしながらも本題はこっちだったようだ。 やがて、 現れたもう一人の自分はクローンだと考えるのが理にかなっていると知り、 二人の間に不思議な交流が生まれる。 一人っ子だと思っていた自分が、 本当は双子だったと聞かされたような気分か。 ところがよく考えてればクローンは彼だけではないはず。 妻の記憶も、 契約期間を終えて早く帰りたい、 会いたいと願う娘の映像も、 遙か昔のオリジナルの体験を再現したものにすぎなかった。

人間は一人では生きられない。 思い出がなくては、 希望がなくては生きられない。 そう感じる自分ではあるが、 自分は果たして人間なのだろうか。 短い寿命を労働者として全うするだけの、 月の裏側の 「蟹工船」。 やがて彼はここを脱出し、 故郷へ帰ることを決心する。 一度も行ったことのない故郷へ。

見終わってみれば、 期待のわりにイマイチぐっと来なかったかな。 ところどころ韓国語が混じるのはルナ・インダストリーズが韓国企業であるということか。 設定は深そうだがジャンプ力に欠けるというのか、 告発するポイントが今さらな感じというか、 小品にまとまってしまっている。

ソラリス的幽霊はあのワンカットだけだし、 地球が記憶の通りか確かめてくれ、 と言うセリフで、 最後は 「猿の惑星」 かと思ったが深読みしすぎだった^ ^ 月面のイメージも通り一辺倒で、 古いSFを見ている気にさせられる。 監督のSFオタクさが裏目に出たか。 しかし英国アカデミー新人賞をもらって一応の評価は得たわけだから、 次回作に期待するとしよう。



月に囚われた男 MOON (2009イギリス) 日本公開2010 公式サイト 象のロケット 
原案・監督 ダンカン・ジョーンズ 
サム・ロックウェル 声 ケビン・スペイシー 

0 コメント: