2.05.2010
サイレンサーのため息 「ヒットマン・リデンプション」
よくわからない邦題を付けられて、 ビデオ屋の片隅に置かれている。 そんな作品に違いない。 だが、 これが悪くない。 出演者の雰囲気、 音楽の使い方、 編集・・ もちろん超傑作というわけではないが、 悪くない。
原題は "マイケル・スミスの死"。 日本人で言うなら "サトウ ヒロシ" ぐらいだろうか、 よくある名前。 同姓同名者ランキング一位二位を争うような三人のマイケル・スミスが交錯する。 一人はチンピラ、 一人は刑事、 一人は殺し屋。 麻薬取引がらみの殺人事件があり現場に駆けつけた刑事は、 倒れている男が自分と同姓同名であったことに少なからずのショックを受ける。
よくある名前だから慣れてるだろ、 と思うが そうでもないらしい。 自分もたまに同じ名前の人に会うと、 たとえ漢字は違っていても、 ああ、 この人もこの名前で呼ばれて生きてきたんだな、 などとヘンな親近感を持ったりするものだ。 それが目の前の死体であったら、 どんな気分がするものだろう。
冒頭で死んでいたチンピラは、 その後の展開では生前の様子が描かれる。 母親思いだが、 その母は頭がおかしくなっている。 他の二人のマイケル・スミスについても、 それぞれがどんな人生を歩んできたかが詳細に描かれる。 事件よりもこうした設定のほうが主とも言える。 刑事マイケルは仕事柄、 妻との約束をすっぽかしてばかりでついには離婚を言い渡される。 家では小さな息子と遊ぶ。 殺し屋マイケルは腕が落ちたと、 雇い主から別の殺し屋を差し向けられる。
チンピラ・マイケルは殺し屋マイケルに殺され、 殺し屋マイケルは別の殺し屋に狙われ、 事件を追う刑事もマイケルで、 妻から離婚を言い渡されている、 という波瀾万丈のプロット^ ^ よく考えれば大した話ではないのに、 画面にはヘンな深刻さとリアリティと一抹のペーソスがあふれる。 そう、 銃に取り付けたサイレンサーから漏れるシュッという銃声のように。 派手な銃撃戦より、 暗闇に響くあの音に銃のリアリティを感じるように。 そのかすかな吐息が漏れた瞬間に人は死ぬのだ。
殺し屋は仕事に疲れ、 追っ手をかわして北へ逃げようとする。 クライマックスは雪の森、 後ろで聞こえる銃声が、 一旦は逃げ延びたかに見えた男を連れ戻す。 非情な男から無常な男へ。 俺は変われないが努力する、 と妻に告げた刑事も駆けつける・・
それにしても邦題は何なのだろう。 24何とかという海外ドラマから勝手に借用してるんだろうが、 マイケル・スミスをマイケル・ジャクソンと改名するようなものだ^ ^ もしビデオ屋の片隅で見かけたら、 思い出して借りてやってくれ。 決して超傑作ではないが、 悪くないから^ ^ しかも製作費は541ドルなのだから^ ^
ヒットマン・リデンプション THE DEATH OF MICHAEL SMITH (2006)
日本未公開
監督 ダニエル・ケイシー
クリス・モラー マイク・ミリー トーマス・ガラッソ
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