12.04.2009

退学か失職か 
「チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室」



密かにマークしていた作品だったが、 いざ見てみると 思ったほどではなかったかな。 "チャーリー・バートレット" という人名のみの原題で、 このキャラの造形がポイントのはずだが 'ひょうひょうとした' 奴という以上には描けてない気がした。 しかしながらアメリカ映画 数あれど、 微妙なニュアンスを描こうとしている微妙なポジションの映画であることに変わりはないだろう。

天才マックスの世界」(1998) や 「ハロルドとモード」(1971) が引き合いに出されるようだが、 前者は忘れたし後者は見てないと思うので細かい考察は抜きにするが、 作品の出来不出来にかかわらず、 もし十代で見たなら何らかのものが心の一角に残る映画なのではないだろうか。

チャーリー・バートレットは成績優秀、 運転手付きのリムジンで送り迎えされる坊ちゃんだが、 父親は不在。 問題を起こしては私立高校をことごとく退学となり、 最後に めでたく公立高校に転入することとなる。 人気者であること、 あるいは人に必要とされることに注力するあまり、 精神科からもらう薬の横流し、 パーティの企画、 邦題にあるとおりの男子トイレでの人生相談など、 いわゆる '高校生らしく' ないことのオンパレードをやらかす。 が '高校生らしく' という規範を外しさえすれば、 ニーズにかなった優秀なビジネスマンあるいは起業家であるだけなのだ。

'らしさ' は劇中で一旦 取り外され、 そしてまた大人のプライドと 'ただの子供' という精神衛生上の年功序列に組み入れ直されるあたりが、 とりあえず収まりをつけてるんだなという気はするが、 同時に 'ただの大人' と子供のプライドに何%かは変換出力されているのは取り柄とも言えるだろう。

公立校の荒廃が取りざたされ、 映画でも学校じゅうに監視カメラが取り付けられる。 抗議する学生たちは "学校は刑務所ではない" と書いたプラカードを掲げる。 自分が十代の頃は、 校則にうるさく軍隊のような日本の学校を嫌い、 アメリカの自由な校風に憧れたりしたものだが、 軍隊どころか刑務所になってしまったのかと一抹の感慨。

ホープ・デイビス演じるチャーリーの母は、 口うるさい母親像と正反対の造形がなされていて印象的だが、 チャーリー役のロシア系 イェルチンより、 モヒカン野郎タイラー・ヒルトンや自殺未遂の劇作家マーク・レンドールのほうが印象深いのが玉にキズか。 デニングスは可もなく不可もなく。

"人気者であることより その人気をどう使うか" ダウニー・Jr校長はそう言う。 中学生くらいの頃、 親からは "友達は選びなさい" と言われ、 教師からは "誰に対しても いい友達でありなさい" と言われたことなどを思い出したりしたが、 最後に劇中歌より詞を抜粋。
 If you wanna be free, be free. 自由になりたいなら なりなさい




チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室 Charlie Bartlett (2008)
監督 ジョン・ポール  日本公開2009 公式サイトは終了 
アントン・イェルチン カット・デニングス タイラー・ヒルトン マーク・レンドール
ミーガン・パーク ホープ・デイビス ロバート・ダウニー・Jr 
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