8.27.2009

ひらめきは雨の中に 「幸せのきずな」



ありきたりな邦題がついてDVDスルーになるそうだが、 これはいい映画だ。 原題は "天才のひらめき"、 巨大な自動車会社 対 発明家個人、 実話に基づく話で、 とくに目新しい演出などはないが話が面白い普通の映画を見たいなら、 ギザ・お薦め!

1960年代、 大学の講師である一人の男。 愛する妻と子供たちに囲まれ幸せだった。 しかし、 なぜクルマのワイパーがこれほど不便なのか不思議でしょうがなかった。 雨で視界が阻まれる、 ワイパーをONにする、 今度はワイパーで視界が阻まれる・・。 発明家の血が騒いだ。 そしてひらめいたのが "間欠ワイパー"! いまや当たり前のこのワイパーを発明したのは、 この男だったのだ。 だが、 そのひらめきは不幸の始まりでもあった。

知り合いの投資家がセッティングしてくれて、 男が "まばたきワイパー" と呼ぶこの技術をフォードに見せる。 凄いね、 ということになり、 実はニーズは非常に高いのに、 まだどこも完成させていないということがわかる。 男はワイパーの製造を希望し、 フォードも条件を飲んで契約、 男は家族とともに浮かれた。 だが、 その後フォードから契約を白紙に戻すとの通達。 そしてある雨の日に男は、 フォードのテストカーが自分が発明したのと同様の間欠ワイパーを装備しているのを目にする。 画期的なワイパーとして絶賛を博し、 他のメーカーも追従し一気に広まる。

このときの男の胸の内、 形容しがたいものがあったに違いない。 手を尽くして不正を正そうとするが、 敵は大会社。 弁護士は示談で手を打つのが得策だと のたまうばかり。 妻や子は離れ、 男は荒れて放浪し、 教職を失い、 何年もの歳月が流れる。

博物館職員となった男に、 ふと時代の風が吹く。 知的財産権を尊重しようという風潮の中、 特許裁判の時効を防ぐ法律ができる。 男はふたたび、 トップ企業を相手に闘う決心をする。 しかも弁護士は自分自身。 ひとり孤独な闘いを挑む男のもとに、 成長した子供たちがひとりふたりとふたたび集まってくる。

たとえ発明家でなくても、 何かをつくる人にはわかるはず。 ひらめく瞬間の高揚、 しかし現実の世界の中でそれが簡単に踏みにじられていくことの焦燥感。 そのアイディアを守ろうとすることが、 ひらめきの尊さを他者に理解させることが、 いかに大きな犠牲を払うか。 ものづくりからサービスの時代に変わったとしても、 真にクリテイティブな能力への理解は、 この映画に描かれた時代と さほど変わってないように思えるのは気のせいだろうか・・




幸せのきずな Flash of Genius (2008アメリカ・カナダ) 日本未公開
監督 マーク・エイブラハム 
グレッグ・キニア ローレン・グレアム ティム・エディス 
ダーモット・マローニー ビル・レイク 

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