8.29.2008

人生なんて中途半端に終わる 「マルタイの女」


マルタイの女 (1997日本)
伊丹十三監督 
宮本信子 西村雅彦 村田雄浩 名古屋章 江守徹 伊集院光 津川雅彦 
小島聖 あき竹城 ラッキィ池田 小日向文世 小林克也 山本太郎 宝田明 

いろいろとバタバタしていて、 また先日のサムネールの件で試行錯誤していて更新が滞ってしまった。 それは引き続き試行錯誤中、 詳細は1つ前のエントリーにて。

見たい新作もいろいろ溜まっているのだが、 窓の外で稲光が炸裂する夜に見たのはコレ。 伊丹氏の遺作であり、 さまざまな 'いわく付き' の映画・・ 実際に途中、 停電で再生が止まってしまった。 ほんとにヤバイ映画なのかもしれない。


 「人生なんて中途半端に、 道端のドブにでも倒れるように終わるものだ」


劇中の津川雅彦のセリフだがすごく意味深だ。

古い雑誌をめくっていて、 そう言えば伊丹十三作品って自分的には微妙に縁遠い存在だったなと思い当たり、 それは一時期、 持てはやされていたことへの敬遠だったりもするが (メジャーなものにはとりあえず反感を覚えるタチなので)、 興行も評価も惨敗だったこの作品がなぜか妙に気になった。 伊丹氏の死の謎については当時さまざまな憶測が飛び交っていたようだが、 現在では検索してもあまり多くの情報は出て来ない。 ダンディでスノッブで完全主義な氏にはこの失敗が許せなかったのだと、 大島渚監督は語っていたらしいが、 深入りすると本当にヤバそうなのでそういうことにしておく。

評価は自分的には70点はじゅうぶんにある。 興行成績はともかく、 悪評は何らかの圧力で作られたのではないかとさえ思える。

ただ社会派の部分は果敢だが、 娯楽作品としても完璧をめざしているところが、 やや堅苦しいというか、 微妙に乗って行けない感じ。 昔見た他の作品にも共通する部分だ。

中学か高校の美術の時間、 あまり描きたくないものを写生なんかさせられると無駄に緻密に描いて、 それはいい点をもらえるのに、 描きたいものを描きたい感じで描くと、 まあ表現は稚拙にせよ、 しら〜とした評価をもらう。 良くも悪くも伊丹十三は、 そんなことを思い出させる人だ。

一方で皮肉にも、 日本って意外といい国じゃないか、 などと感じ、 古き良き時代の筋の通った気骨に触れる思いがする。 "失われた10年" と言うけど、 たった10年前のこの映画には、 今の日本映画が失ってしまった '重さ' が詰まっていて隔世の感がある。

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