5.10.2008

毛沢東の夢 「長江哀歌」



「青の稲妻」 「世界」 とジャ・ジャンクーを見てきたけど、 ベネチア金獅子に輝いた本作品はそれ相応の風格を備えているというだけでなく、 やはりどこかが違っている。 それはおそらく主人公が若者でなく、 映し出される風景が混沌の中にも見出される希望ではなく、 壊されて水の底に沈む故郷、 あるいはライトアップされて現れた橋を 「毛沢東の夢」 と人々が呼ぶことへの行き場のない失望だったからではないだろうか。

16年前に生き別れた娘に会うため、 炭鉱町からやってきた男。 しかし携えた住所はすでにダムの底に沈んでいた。 さらなるダム拡充のための解体作業に集まる労働者たちで最後の活況を呈する町。

もうひとり2年間音信のない夫に会いにやってきた女、 夫は解体現場の長に出世し別の人生を歩んでいた。

ふたりの人捜しは交差することなく淡々と進められ、 それぞれの目的を暫定的に達成して帰って行くが、 本編1時間40分を構成するのは主に淡々とした会話で、 淡々としてはいるが現在の中国をみつめるジャンクーが集約した会話がそこにあるのだと思う。

前作 「世界」 的なキッチュなシーンが1時間10分前後にひとつとラストにひとつ唐突に挿入されているが、 まあこれはこれでいいことにしよう。

淡々としたシーンの連続にアクセントを効かせるように置かれた煙草、 酒、 茶、 飴。 これらは嗜好品であると同時に人と人を結ぶ伝統的なアイテムということなのだろう、 近代化する中国が失いつつあるものを示唆する意味合いで使ったのではないかな。

風景から空気までどっぷりと浸れる中国映画だが、 そんな中国映画のシーンを構成するにもいまや携帯が欠かせなくなり、 着メロはさすが中国歌謡か?! と思いながらも瓦礫の下で鳴り響くそのメロディこそが長江のエレジーなのだろう。

長江哀歌 エレジー STILL LIFE/三峡好人 (2007公開 中国)
監督 ジャ・ジャンクー *ベネチア金獅子 
チャオ・タオ ハン・サンミン 

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