
最近、 人は1000才まで生きられるとか、 STAP細胞など、 強引な希望に満ちた話が楽しいが、 1985年に端を発する実話をもとにしたこの映画では、 HIV感染者にはAZTというFDA認可の副作用の強いわりに効果のない薬か死かの選択肢しかなかった。 AZTというのは製薬会社とFDAの癒着のもとで推奨されていたが、 実はウィルス退治に固執しなければ、 免疫力を高めて発症を防ぐ対処法もあった。 しかしそのための薬はFDAに認可されていないので使えないというのが実情だった。 マコノヒーは今回、 この役作りに際して体重を何キロ落としたのだろう、 別人かと見まがう姿になって、 こうした医療の権益のしくみと戦う。
ある日HIVポジティブを告知されたロンは、 根っからの女好きでもあり我が耳を疑ったが、 余命30日を宣告される。 ワラにもすがる思いでメキシコのとある医者を尋ねると、 AZTを絶って、 ペプチドTという安全な薬とビタミン剤で免疫力を高めれば発症は抑えられるのだという。 そうして30日はおろか、 何年も生きることとなったロンだが、 同じ境遇の者を助けたいと、 このペプチドTを未認可販売する。 やがて問題となり薬は没収され、 裁判。 そこで勝ち取ったものは決して大勝利とは言えないまでも、 小さな生きる権利。
この過程で、 かつては毛嫌いしていた性同一性障害の男をビジネスパートナーにし、 理解のある女医や境遇をともにするさまざまな人たちに支えられると同時に貢献し、 もう一度乗りたいと語った牛のロデオ出場を実現させる。 80年代の話でもあり、 いまさら医療の実態を暴くと言うより、 現実と向き合う男の生きざまが織りなす人間模様が力点。 しかし今でも医療周辺では同様のことがありそうだし、 せめてガンが治るようなってくれないと自分の病院嫌いも治らない。 とりあえず映画を楽しみにしてほしいと同時に、 1000年寿命説のオーブリー・デグレイ博士にも乞うご期待!




ダラス・バイヤーズクラブ Dallas Buyers Club (2013) 日本公開2014.2/22
監督 ジャン=マルク・ヴァレ 公式サイト・予告 象のロケット
マシュー・マコノヒー ジャレッド・レト ジェニファー・ガーナー
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