
おおキアヌ、 久しぶりだなという感じで見たが、 共演はヴェラ・ファーミガだけでなく、 ジャームズ・カーン御大も。タイトルの印象ほどクライムストーリーではなく、 惰性で流れ行く日常をいかに変革するかという考察に富んだ良作ではないだろうか。 高速道路の入り口に座る人、 売れない女優、 刑務所が家のようになってしまった詐欺師、 マルチ商法にハマる人、 借り入れを拒否された銀行の警備員など、 いわゆるルーザーめの人々が主役。
深夜、 高速道路の入り口にあるブースに座るキアヌことヘンリー。 朝、 帰宅すると奥さんが朝食を用意してくれている。 何気なく幸せな日々は、 それでもどこか冷めていた。 そこへ突如、 高校時代の同級生とかいう男が草野球の臨時プレーヤーにとヘンリーを誘い出す。 銀行でカネを下ろすからちょっと待っててくれとクルマを停めさせる。 ふとハンドルの脇を見ると直結されたコード・・
警察もヘンリーが利用されただけということはわかっているが、 かたくなに口を閉ざしているため結局、 懲役3年。 品行方正で刑期満了を待たずして出所するが、 奥さんのお腹には別の男との間の子供がいた。 それでもヘンリーは寡黙に荷物をまとめ、 なぜか足はあの銀行へと向かう。 ここがすべての始まりの場所かと感慨深げに銀行の建物を眺めていると、 クルマに当てられる。 運転していた女が降りてくる。 あのときの警備員も親しげに声をかける。
近くのバーのトイレに禁酒法時代の新聞記事がインテリアとして貼られてあるのだが、 それをよく見ると銀行と劇場はかつて地下トンネルでつながっていたらしい。 劇場では先ほどの女がチェーホフの 「桜の園」 をリハーサル中だった。 無実の銀行強盗で投獄されたわけだが、 どうせならそれを事実にしてやろうと意を決するヘンリー。 刑務所で同室だった男に面会に行く。
ここで微妙に感銘を受けるのは、 いいことであれ悪いことであれ、 ちょっとした出会いをムダにしないヘンリーの態度。 それが停滞していた日常を変えてゆく。 ただのお人好しではなく "変え方を忘れていた、 壊さないと新しいものは作れない" と自覚しての行動だったのだ。 「桜の園」 にも同様のテーマが込められ、 初演の舞台とともに彼らの計画は実行される。 最後まで自分の心に忠実であることが日常というリスクに立ち向かう唯一の手段とばかりに、 打算と保身だけで動かない人間像の取り上げられ方が新鮮に思えた。
ニューヨーク州バッファローという微妙な街を舞台に、 ポスターやビジュアルも地味めながら、 音楽はソウルフルにイカしてて^ ^ 夜中にナイアガラの滝を見に行くデートなども素敵。 乞うご期待。




フェイク・クライム HENRY'S CRIME (2010) 日本公開11/26 公式サイト
監督 マルコム・ヴェンヴィル 象のロケット
キアヌ・リーブス ヴェラ・ファーミガ ジェームズ・カーン
ビル・デューク ダニー・ホック フィッシャー・スティーヴンス
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