6.10.2011

ご名算・・ 「武士の家計簿 」



原作ありきの映画化で、 しかも時代劇となると、 森田監督のファンながらも少しテンションが下がる。 いい企画だとは思う。 家財道具を楽しく売っぱらう、 なんて感覚はやっぱり監督らしい。

"お家" はイコール "家族" でもいいと思うが、 幕末のあの時代が本当にこんな感じだったのかはわからない。 お金はなくても1本筋の通った男であることの価値。 '仕込まれた' お家芸が身を助ける。 ・・示唆に富んでいる。 にもかかわらず、 どこかDVD化もされない、 バブル末期の 「おいしい結婚」 (1991) な印象になってしまう。

そろばんの音で始まり、 そろばんの音で終わる。 そろばんと言えば 「そろばんずく」 (1989) がふと思い出される。 インタビューではブランド監督指向を冗談めかして語っているが、 あんた始めからブランドだったじゃないの。 不思議なディテールも好きだし、 じゅうぶん良くできている作品ではあるが、 どこか寂しい。 支出を抑えるだけで、 収入アップの視点がないからか。 蓄えた年金をトボトボ使っているような作品とも言える。

奇しくも 「わたし出すわ」 と正反対の内容のようで、 経済におけるエネルギッシュなカオスだけが取り外されてスポイルされている気がするのはなぜだろう。 しかし、 その点にだけ日本のリアリティを感じてしまう。 そして妹はどこへ行ったのだろう。 。

自分なりに森田芳光論をさらっと言うと、 自分のなかの欠落を永遠に埋めようとしないところがいいのだが、 この作品では欠落を見ないようにしているのではないか。 あからさまに欠落を見て、 なおかつ放置してほしいんだな。 。 1+1=0 でも 1+1=3 でも 1+1=11 でもなく、 1-1=0 あるいは 1÷0=?? こそが監督なのだから。


武士の家計簿 (2010日本) 公式サイト 象のロケット 
監督 森田芳光 原作 磯田道史 
堺雅人 仲間由紀恵 西村雅彦 草笛光子 伊藤祐輝 藤井美菜 
松坂慶子 中村雅俊 

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