12.25.2010

仕事ですから・・ 「トラブル・イン・ハリウッド」



’珍作’との評判だったが、 けっこう面白いじゃないか。 俺が ’珍作’ 好きだからか。 。 ハリウッドの内幕を描いたというより、 プロデューサーという立場の悲哀を描いたと言える。 普段、 プロデューサーがどうのなんて知ったような話をしているが、 実際のところプロデューサーは何をしているのか。 それがリアルに描かれていて興味深い。

結局のところプロデューサーというのは、 出資者と製作者の間に立つ中間管理職、 調整役なのだ。 作品誕生のキーパーソンのようにクレジットされるのはせめてもの ’ねぎらい’ で、 実は作品に関する権利もなく、 映画の総責任者のように呼ばれるのは "士農工商" における武士と同じかもしれない。

本編で発生するトラブルは2件にすぎない。 しかしながらそれは映画製作を象徴する的確な問題のピックアップと言える。 一つは出資者と監督、 もう一つは出資者とスター俳優。 そしてどちらのケースにおいてもプロデューサーは、 その大きな利害関係の対立を調整しなくてはならない。 スクリーナーでの評判がよくないからという理由で、 出資側はエンディングを変えろと言う。 脚本は承認されているはずだし、 撮影前には大絶賛だったじゃないかと監督は納得がいかない。 だが最終編集権は映画会社にあり、 変えないならそれを行使するし、 カンヌへの出品は取りやめるとまで言う。 プロデューサーは両者の間を のらりくらりと立ち回り、 最終的に監督は、 未使用のカットを使ってエンディングを修正する。 それは意外にもよくまとまっている。 誰しもが納得した。 さすがだな、 と。 しかし・・

自分もいちおうクリエーティブな仕事をしているので、 こういう話は身につまされる。 クライアントから修正を要請されると、 またバカが、 わかってないなと憤慨する。 しかし わかってないのが自分のほうなのは、 本当のところはよくわかっていて、 なんとか知恵を絞って納得のいく修正を施したら、 意外にもそちらのほうがよかったと自分でも思ったりすることがある。 だがこの監督の場合は根性が入っているというか、 予想だにしない展開となる。

次なる問題は、 もうすぐ撮影が始まろうとしている作品。 主演男優さんはヒゲを伸ばしていて、 お気に入りとみえて剃ろうとしない。 なんとか説得を試みるも相手はキレやすい男とあって、 ヒゲづらもいいかもな~などと言ってしまうが、 出資者からは製作中止と告訴をちらつかされる。 俳優のエージェント経由でさらなる説得を試みるが・・ エージェントもプロデューサー同様につらい職種だ。 自殺した一人のエージェントの葬式のシーンもある。

私生活では円満離婚のセラピーを受けているが未練たらたらで、 一つ前の元ワイフとの間の娘はすでに高校生なのだが、 慰謝料のためにも作品を失敗させるわけにはいかないとストレスに満ちた日々を今日も送る。 女優の卵がアプローチしてくるくらいがせめてもの慰めではあるが、 それだって稀に起こることにすぎない。 脚本家からは気乗りしない次回作候補をプッシュされるが、 こいつこそが元妻の新しい男。 それでもやがてその作品のプロデューサーとして立つことになりそう。 。 プロデューサーとはつまり、 そういう仕事なのだ。

ショーン・ペン、 ブルース・ウィリスは本人として出演、 デ・ニーロは物悲しい中間管理職のオッサンを見事に?演じていて 「タクシードライバー」 だった頃が懐かしくもあるが、 昨今の大物ぶった演技より好きだなあ。 デ・ニーロ自身この作品のプロデューサーでもあるので、 おそらくは楽しみながら演じた役どころなのだろう。 これはあくまでハリウッドの一例にすぎず、 そうでないプロデューサーもいるに違いないが、 一面の真実であることは確かなようだ。 9月の公開から数えて早いDVDリリースになるが、 大歓迎。 もっと早くてもいいくらい。


トラブル・イン・ハリウッド (2008) 日本公開2010 公式サイト
What Just Happened
監督 バリー・レヴィンソン 原作・脚本 アート・リンソン  象のロケット 
ロバート・デ・ニーロ ショーン・ペン ブルース・ウィリス 
マイケル・ウィンコット クリステン・スチュワート キャサリン・キーナー 
ジョン・タートゥーロ ロビン・ライト・ペン 

2 コメント:

umetraman さんのコメント...

こんばんは!

これ、名古屋のミニシアターでもやってましたよ。監督や役者が有名なんでちょっと気になってました。
私もプロデューサーの仕事がどんなものか興味がありますんで、ぜひ観てみたいと思います。それにしても役者勢ぞろいですよね!

今年も色々とお世話になりました。kiona様記事のおかげで、最新映画を知ることができ助かりました^^
来年もまた宜しくお願いしますね。
それでは良いお年をお迎え下さい♪

kiona さんのコメント...

>umetraman さん
コメントありがとうございます。

この作品、みなさんハズレみたいなこと言ってるので、覚悟して見たんですが^ ^ 意外にイケました。ほんとにキャストは豪華で、これだけ集められたのも、やはりデ・ニーロの顔でしょうか。お正月にでもぜひご覧ください。

こちらこそ旧年中はお世話になりました。懲りずに来年もよろしくお願いします。映画とタバコはなかなか辞められません^ ^よいお年を!