ジム・ジャームッシュ・・ この名前にピンとくるのは ある年代の人だけ。 今や知る人ぞ知るになってしまった感のあるフィルムメーカーの一人。 「ストレンジャー・ザン・パラダイス」 (1984) で登場、 あえてモノクロで撮るゴダールばりのスタイルにラウンジ・リザーズの音楽。 ほんとにカッコよかった。 ジャームッシュは一時は時の人で、 それからしだいに忘れられたが、 自分などに取っては映画をグッと引き寄せてくれた人。 オフビートあるいはユルさの元祖的存在、 忘れるわけにはいかない。
最近の写真を見たら、 すっかり白髪頭ながら それでもパンキッシュに逆立てているのには笑えたが、 本作品を見てもじゅうぶん健在じゃないか。 それしてもDVD化が遅かったな、 やっと見れた。 舞台はスペインで、 赤が印象的なスペインのインテリアや風景が味わえるが、 あいかわらずアンチアメリカで古い映画が好き、 というスタイルが滲む。 "最高の映画は見れなかった夢のようなもの"・・ そんな、 わかったような わからないようなフレーズも楽しめる^ ^
マッチ箱を交換し、 中に入っている暗号による指示を読んだら、 なぜだかいつも2杯頼むエスプレッソでその紙を飲み込み、 不思議な指示に関係するデジャヴを見たら、 指示どおりの来訪者が現れ、 またマッチ箱を交換し、 中の暗号を読み、 エスプレッソで・・ この繰り返しなのだ^ ^ 森田芳光監督の 「ときめきに死す」 のようなノリかと思われたが、 最後にミッションは遂行される。 そして暗殺のターゲットこそはアメリカンなのだ。
DVDパッケージは 「2001年」 のHALを思わせるし、 そんな指摘も見かけたが、 そこまで哲学的にも思えない^ ^ しょせん思わせぶりな連想ゲームでしかないのかもしれないが、 そうやって切り捨てるには味わい深すぎる。 透明のレインコート以外に衣装のないパス・デ・ラ・ウエルタ、 フラメンコの練習風景、 そして何よりこの男イザック・バンコレの顔。 なぜかグレース・ジョーンズを思い出す。 。
その昔 "スタイリッシュな映画" という言い方があった。 今はなぜだか そういう形容は少なくなったが、 ジャームッシュの古い映画に対する愛情は、 異国の電話ボックス、 当時の服装、 髪型、 タバコの吸い方・・ フィルムに刻まれた生活のディテールへのリスペクトなのかもしれない。 当時は当たり前だったファッションが時代とともにキッチュに変わることのおかしさ。 ジャームッシュのオフビート感覚のベースにあるのはそういうものかもしれない。 バンコレ演じる "孤独な男" が携帯電話を捨てさせるのも そんなことの象徴と言えるし、 タバコを吸うシーンのない映画なんて映画ではない。 クリープを入れないコーヒーのように。 。 そう言いたいだけなのかもしれない。
アメリカ人でありながらアンチアメリカな '孤高の' フィルムメーカーを、 確か今年のはじめに そんなテーマを掲げた当ブログの今年最後の月の一発めにエントリーできたことを嬉しく思う。 また時折り、 不思議な味わいの映画を引っさげて舞い戻ってほしい。
リミッツ・オブ・コントロール (2009アメリカ・日本) 公式サイト 象のロケット
THE LIMITS OF CONTROL
監督 ジム・ジャームッシュ 撮影 クリストファー・ドイル
イザック・バンコレ パス・デ・ラ・ウエルタ ティルダ・スウィントン
工藤夕貴 ガエル・ガルシア・ベルナル ビル・マーレイ
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