4.11.2010
皇帝に勝つのは奴隷だけ 「カイジ」
映画的な関心や収穫はまったくなかったが、 まあ見とけってことで。 。 想像どおり原作の力に依存した二次的な商売でしかなく、 役者が頑張っても脚本家が上手くさばいても、 映画館で行われる娯楽ということにすぎない。 映画館で上映されるからといって映画だとは限らない。 面白ければいいじゃない? と言うかもしれないが、 そう言う人を観客にしないと続けられない産業に、 すっかりなってしまったということだ。 そしてそれは自分にとっての映画とはまるで違うものなので、 ある意味では安物のホラーよりタチが悪い。
負け組が主人公の物語で、 敗者復活のゲームに命を賭ける。 面白さのポイントはいろいろあるんだろうが、 本作ではゲームの仕掛けや駆け引きがほとんど。 だが当然ながら、 このようなメジャー作品に係わっている人たちは負け組ではなく、 売れた原作を映画化することはギャンブルではない。 純然たるビジネスだからリスクは低い方がいいし、 出資も集めやすい。 そういう方式がすっかり出来上がっているのだから、 裏にいる人はまるでこの映画での香川照之のような人なんだろうと想像する。 原作への共感から映画化への情熱を燃やしたなどというコードはあるわけもなく、 商売になると思ったから取り上げた。 それだけなのだ。 こんなことを書いていること自体、 彼らから笑われる甘ちゃんの自分がいるわけだが、 ときどきこの落差をどうしようもなく持て余すのだ。
それほど親しくない人と何かのはずみで映画の話になったとき、 この手の映画を絶賛されたり、 映画って面白いよなと言われると困ってしまう。 こちらがそこそこ映画に詳しいことがわかると、 お薦めは?とくる。 お前に薦める映画はない。 こう明言できればいいのだが何せ甘ちゃんなもので、 無難なものを見繕う無駄骨を折るのだ。 そういう人と会ったときは、 映画なんて観ないフリをしたほうがいいのかもしれない。
エントリータイトルは作品中に出てくるゲームのルール。 いや、 面白かったよ。 藤原竜也もよかったし、 天海祐希も香川照之も。 原作も知らないしケチの付けようがない。 ただ こんな映画を物心ついた頃に見て、 映画ってこんなもの、 どっかからよさげな原作を引っぱってきて、 それらしく演じさせ、 人々に話題を提供するという大義のもとカネを巻き上げていく。 そういうものだと思ってしまったら、 あるいはそう思っている少年少女がいるのだとしたら、 映画は自分で自分の首を絞めているに違いない。
こんなことを書いてもどうしようもないだろうなと、 不必要な無力感に襲われるたぐいの作品。 だからといって悪く言いたいわけでもないのは、 もっともっとヒドい作品があるからに他ならず、 そういう相対論になってしまうこと自体、 すでに様々なトリックに飲み込まれているなと思う今日この頃。 これをランキングするなら星3つくらいか。 2つと3つには気分程度の差しかなく、 4だからといって人に薦められるかどうかは別問題。5つ星なんて一生に両手と両足の指で数えられるくらいだろう。 そこには相対的なスケールは始めからない。 自分だけの5ツ星に出会えることを願って、 きょうもせっせと手繰り寄せるだけなのだ。
宇宙がドーナツ型ならヒモはひっかかって手繰り寄せることはできないし、 ヒモが帰ってきたら宇宙は球形だと証明できる。 そんなトポロジーな感覚なのだ^ ^・・てなことは本編には出て来ないよ。 。
カイジ 人生逆転ゲーム (2009) 公式サイト 象のロケット
監督 佐藤東弥 原作 福本伸行(コミック)
藤原竜也 天海祐希 山本太郎 松山ケンイチ 光石研
松尾スズキ 香川照之 佐藤慶
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