3.09.2010

嘘も方便? 「インフォーマント!」



FBIは内通者を獲得する。 これによって捜査は大幅に進展すると思われたが、 もしこの内通者がとんでもないウソつきだったら・・。 事実に基づくそんな映画。

大した予備知識もなしに見たので、 途中まで このいいかげんなヒゲおやじがマット・デイモンだと気づかなかった。 いやマジで^ ^ ぷくっと中年太りまでしてるし、 よくいる微妙な感じのオッサンだなと思ってた。 いやあ、 役者魂というのか何というのか。

この作品については そのデイモンがわざとらしいとか、 ソダーバーグの演出が鼻につくとか、 あまりいい評価を見なかったが、 けっこう面白かったな。 アメリカでの評価は悪くないようだ。 確かにここにはアメリカ社会の一面が不思議なアングルで描き出されているように思う。 厳格な契約社会と、 ある部分では他の国々に比べ寛容なところ。 そうした相反する規範のミックスこそがアメリカだという気がする。

よく言われることだが西洋諸国は基本に神との契約があり、 契約が支配する社会で、 アメリカなどは弁護士の数もハンパじゃないと。 だがアメリカのヨーロッパと違うところは、 そこに感情的な例外規定が多く設けられているところではないか。 例えば情報提供による取り引き。 犯人の一味であっても、 有用な情報を提供することによって罪が軽減される。 犯罪ではないが、 起業が失敗した際のやり直しがきくのもそうだし、 失敗に対し、 反省と更生に対して寛容な社会と言えるだろう。 このことがこれまでアメリカの発展に大きく寄与してきたことは間違いない。

デイモン演じるウィテカーという男は、 アメリカのこういう部分を上手く利用して生きてきた男なのだ。 自分は孤児だったが裕福な家庭に養子として迎えられた、 という経歴はまるでデタラメで実の両親は健在。 孤児ということにしたほうが "大変だったのに頑張ったのね" と実寸より偉大に見られる、 だからそうしてきたとのこと。

勤める会社が価格カルテルを敷いているという情報提供により、 経営者の追い落としを画策したが、 実は自分もその美味しい汁を吸ってきた側であり、 むしろ収賄の多くは自らが発案したもので、 だがFBIには上手にフィルタリングをして渡す。 自分に都合の悪い情報は隠し、 会社の不正を正す正義のヒーロー気取り。 だが情報操作は破綻をきたし、 立場が危うくなると今度は FBIに利用された、 政府に欺されたと騒ぎ出す。 ほんとに調子のいい奴なのだ。

ウソがばれても しおらしく真実を語るふりをすると、 FBIは再び人のいい面を見せる。 弁護士を変えれば新たな戦略も生まれる、 最後まで奥さんに愛想を尽かされることもない。 恐らくアメリカ人は、 この男をダメとは言い切れないのだろう。 大なり小なり、 誰もが使っている人生の戦略をデフォルメしただけの男なのだから。

味の素など実在の日本の企業名もバンバン出てくるが、 その辺も事実であり許可は必要ないということか。 これまた評判の良くない比喩だらけのナレーションだが、 ひらめきを感じる、 悪くない。 いい勉強になる映画だ^ ^


インフォーマント! THE INFORMANT! (2009) 公式サイト 象のロケット 
監督 スティーブン・ソダーバーグ 製作総指揮 ジョージ・クルーニー 
マット・デイモン スコット・バクラ メラニー・リンスキー 
インフォーマント! [DVD][DVD]

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