2.27.2010
箱! 「運命のボタン」
早朝、 呼び鈴に起こされて玄関に出てみると不思議な届け物が置かれている。 それは箱、 開けると中には核ボタンのようなものが・・ 追って不気味な顔の紳士が訪ねて来て、 贈り物について説明する。 "ボタンを押すと、 あなたの知らない誰かが死ぬ。 そしてあなたは100万ドルを受け取ることができる。 押さなければボタンは回収され、 プログラムを書き直して別の誰かに届けられる。 期限は24時間。"
あなたらなら どうする? その前に不審な郵便物は開けない? 現代だとそうなるかもしれない。 しかし舞台は1970年代、 人類は宇宙へのロマンに燃え、 興味の対象はすでに月から火星に移っていた。 地球外生命に出会えるのではないかという密かな期待がこの星を覆っていた。 だが探査衛星を飛ばしたりする程度の科学より、 はるかに進んだ科学を持つ者がそこにいたとしたら。
SFなのだろうか、 サスペンスなのだろうか。 しいて言うならレトロSFか、 クラシカルな雰囲気のなか、 塗り替えられるはずのない過去に別の分岐点があったかのような残酷な二者択一が仕掛けられる。 それは人類へのテストだったのだ。 監督は 「ドニー・ダーコ」 のリチャード・ケリー。 今回のは面白い^ ^ キャメロン・ディアスは小学生の息子を持つ母役で落ち着いた演技を見せる。
ディアス演じる母は小学校の教師、 幼い頃の事故で少し足を引きずる歩き方になる。 そのことで息子もからかわれるが、 そんなことよりも授業料の免除制度が打ち切られることの方が深刻だった。 夫は宇宙飛行士を夢見て、 薄給のNASA勤め。 傍らで新素材による義足の研究もしている。
貧しいながらも幸せな家族、 だがこんな誘惑が舞い込んだら、 清く正しくいられるはずがない。 時期を同じくして、 不思議な殺人事件が起きる。 女が至近距離から心臓を撃ち抜かれて死ぬ。 小さな娘は無事に発見され、 女は全くの無抵抗で死んでいるため強盗にしてはおかしい。 だが事件の解決を待たず同じ運命がこちらの家族にも迫っていた。 NSA(国家安全保障局) までが絡んできたら、 これはもうただ事じゃない。
こういう不思議な世界観の話に触れると 「ファンタズム」 を思い出すのだが、 いまどき知っている人も少ないに違いない。 この物語も、 いまどき火星人なんて持ち出す人はいないのだから、 一歩間違うと独りよがりのズレた絵空事で終わってしまう。 設定を現代に変えろとの指摘が、 製作過程で一度はあったのではないかとも想像する。 にもかかわらず70年代という設定を優先したのだとしたら、 それこそがまさに二者択一、 たとえ間違っていたにせよ逆もまた真なり。 それによって監督の映画になったと言えるのだ。
だが例によって邦題には苦言を呈さないわけにはいかない。 原作はショートストーリーとのことで、 タイトルは "Button, Button"。 だが映画は "The Box"。 これをどっちでもいいやと捉えることは、 誰が脚本を書き監督をしても、 原作から抜け出ることはないでしょと言ってるのと同じ。 配給元が映画を否定してどうするのだ。 '運命の' というベタな形容詞が不要なのはもちろん、 勝手に箱をボタンに戻してはいけない。 確かに箱の中にはボタンが入っているのだが、 劇中の次のセリフを聞いたなら勝手な変更はできないはずなのだ。
君たちは箱だ
箱に乗って (車) 箱に住み (家) 箱を眺める (TV)
死んだら箱を抜けだして (肉体) 空箱は箱に収められる (棺桶)
客の入る邦題を考えてもらうのはけっこうだが、 せめて本編を見てからにしてほしいものだ。 とりあえず5月頃、 公開予定だそうだ。
運命のボタン The Box (2009) 日本公開2010.5/8 公式サイト・予告 象のロケット
監督 リチャード・ケリー 原作 リチャード・マシスン
キャメロン・ディアス ジェームズ・マースデン フランク・ランジェラ
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