1.10.2010

アイロンがけの当て布 「ディア・ドクター」



また世間とのギャップの大きい分野だなあ・・ この監督さんも。 「ゆれる」 のときもそうだったが、 みんないい、 いいって言うんだけどね。 来ないんだよな、 ピンと。 。 じゃあ書かなければいいって話だが、 気に入った作品だけを書くならエントリーは1/100くらいに減ってしまうし^ ^具体的にどこが どうピンと来ないのか、 気の進まない分析だがまとめておくか。

話は面白いと思うんだよね。 寒村でみんなに慕われる医者が実は無免許だった・・ それが医師制度や医療行政への批判ならピンと来るんだが、 こういう切り口にしておいて、 ヒューマニズムあるいは共同体幻想で刈り取ってるみたいな感じ。 批判なりアンチテーゼの矛先は社会全体や今の世の中に対してチラッとは向いているのかもしれないが、 酒の席で問題発言をしては "まあ、まあ" と収められ "みんなガンバってるんだし" と結論づけられてしまうような気持ち悪さがある。

また表現全般においてリアリティがありそうでない。 非常に理詰めで計算高く構築されているのはいいとしても、 それは何のためかというところが曖昧な気がする。 けっきょくは自分自身の評価のため、 しいてはメジャー資本の期待に答えるため。 まるで有能な経営者のようだ。 八千草薫がアイロンがけのときに使う当て布に付いているシミ、 あれだけがリアルだった。

鶴瓶は悪くないが、 それでも話題性優先の予定調和的なキャスティングだ。 仮に香川照之がドクター役だったらどうだろう、 鶴瓶が薬屋の営業で。 そのほうが面白そうだし、 しっくり来ないか? それと落語のカセットって何? 鶴瓶が落語家だから? そう思ってる人はどのくらいいるのだろうか。 テープを流す割りに落語の内容は聞こえてこないし、 このネタは完全に不要だな。

肺気胸の応急処置を余貴美子が指導するシーンでも、 何を指導しているのかわからない。 穴を開けるポイント? そんなのは 'だいたい' だろう? 正確なポイントに誘導されている風にも見えず、 あとは刺す勇気というか勢いだけじゃないの? 良きサポートを受けているシーンが必要なのはわかるが、 どうも雰囲気だけという気がする。

映像になりきらない部分はすべて 辛口の刑事が言葉で説明してくれるが、 これを外したならどうだったろう。 説明不足にはなるだろうが その分、 言葉の代わりに映画的な表現を模索する努力はできたのではないかと。

いい着想があるにもかかわらず、 ササッと小手先で料理してしまった感のあるブルーリボン賞ノミネート作品。 一般人と映画の話になるとき、 しばらくは挙がってきそうなタイトルで・・ めんどくさいな。 。

ディア・ドクター (2009日本) 公式サイト 
原作・脚本・監督 西川美和
笑福亭鶴瓶 瑛太 余貴美子 井川遥 松重豊 香川照之 八千草薫 
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