8.20.2009

いい世の中の指針とは? 「縞模様のパジャマの少年」



ナチがらみの物語は次々と生まれる。 ある意味ではネタの宝庫なのだ、 ナチというのは。 本作は '衝撃作' などと表現されているが、 少し違う気がする。 すごく感情を揺さぶられる話だが、 確信犯的すぎる。 あざといとも思える。 しかし映画を見る限り そんなイヤらしさを感じさせないのは、 少年たちのあどけなさ、 そして監督の力量ゆえだろう。

ナチがらみだから観る人のほとんどは、 ほら見たことか、 天罰は下るのだ、 と感じ、 それを映画の感想として持ち帰るに違いない。 しかし仮にこれがナチという既成事実でなかったならどうだろう。 あなたがいま正しいと思ってやっていることは、 若い世代に悲劇をもたらさないと言い切れるか。

大人にはイヤでもやらなくちゃいけないことがある・・ そんなニュアンスのセリフがあった。 誰もが日々、 自分にそう言い聞かせてやっていることがあるはずだ。 自分がとんでもないことをやっているなどとは、 この父親もその時点では認識できていなかったことだろう。 あとでわかっても、 もう遅い。 永遠に取り返しのつかないことを、 正しいこと、 子供たちのためと信じて 'イヤでも' やったのだ。

あるいは 'イヤでも' と言いながら実は、 組織の中で自分のポジションが上がっていくことはやはり快感だったのかもしれない。 徐々に追いつめられているという危機感を抱きながらも、 自分が置かれた幻想の現在を壊すことができず、 嬉しいくせにイヤだとこぼし、 イヤでもやらなくちゃいけないと子供に説教する。 このこと自体、 子供をガス室へ送る行為と言えるのではないか。

大人が子供に教えることなんて一つや二つあればいいほうで、 子供から教えられることのほうが多いに違いない。 "イヤなことはやる必要がない!" ・・ 子供から教えられるこの事こそ、 紛れもなく いい世の中の指針だ。


縞模様のパジャマの少年 (2008イギリス・アメリカ) 日本公開8/8〜 
The Boy In The Striped Pajamas (Pyjamas)  公式サイト&予告 
監督 マーク・ハーマン 原作 ジョン・ボイン 
エイサ・バターフィールド ジャック・スキャンロン アンバー・ビーティー 
デヴィッド・シューリス ヴェラ・ファーミガ ルパート・フレンド 
デヴィッド・ヘイマン シーラ・ハンコック リチャード・ジョンソン 
縞模様のパジャマの少年 [DVD][DVD]

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