7.27.2009

父、不要? 「リリィ、はちみつ色の秘密」



そろそろDVDになる頃なので取り上げてみたいが、 まず このトップのイメージに違和感を持たれたのではないだろうか。 アメリカではこんなビジュアル、 日本では下のDVDジャケのようなビジュアルで宣伝されているので違う映画に思えてしまうのだ。 上はサイト用のオリジナルイメージということもあるし、 アメリカでもポスターやDVDはもっと落ち着いたクラシックな感じではあるが、 いずれにせよ大きく雰囲気が異なる。 原題と邦題でイメージ検索すれば、 出てくる写真の傾向の違いに唖然とすることがよくあるのだ。

それぞれの国民性にあわせてのマーケティングに他ならないが、 日本版のテイストは正直、 あまり見る気がしなかった。 自分の好みが偏ってるというより、 なんとなく見えてしまう感じだったのだ。 アメリカ版の方が微妙に興味をそそられる。 どんな映画か見当がつかないから^ ^ で見終わって、 結局どっちの雰囲気が より映画にマッチしているかというと、 アメリカ版のほうではないかと。

舞台は1964年、 黒人の公民権運動が実を結んだ年。 黒人に選挙権ができたが、 南部では選挙者登録に行くと殴られたり、 拉致され殺されたケースもあったとか。 多くの黒人が使用人であったり乳母であった時代、 母に捨てられた白人の娘は、 自分を思ってくれる三人の黒人を母と考えるようになるという話。 ダコタ・ファニング演じるリリィは原作者自身なのだろう。

ハチミツは、 かつては乳母であったオーガストが自立のために始めたビジネスで、 その味は町でも評判だった。 家出をしたリリィは母の思い出をたどってこの地にたどり着き、 オーガスト、 ジューン、 メイとカレンダーの名前で呼びあう三人の姉妹に出会う。 リリィは実家の使用人であったロザリンとともに家を出るが、 やがてロザリンは欠けていた月ジュライとなる。 リリィはミツバチの飼育を手伝い、 女王蜂のいる巣箱の中の秘密に思いを馳せる。

母性、 女王蜂・・ これらのメタファーを通じて母と娘、 あるいは人種や血縁を超えた愛が描かれているのだろう。 しかしリリィの実父は、 うだつの上がらない偏狭な南部白人男というだけで終わらされているし、 拒否され続けてもジューンに結婚を迫る男は添え物のような存在だし、 メイが思い寄せたザックは黒人ながら弁護士を目指すが、 リリィと映画館にいるところを見た白人たちに拉致され、 リリィへの恋心は時代が変わるまで保留とするような意気地なし。

60年代中盤にまだKKKのようなことがあったのは信じられない気がするが、 本作は総じて男を卑しく描いている古いタイプの女性映画という気がしなくもない。 オバマ大統領が出てくるような背景の中で注目された原作なのかもしれないが、 歴史的なことも政治的なことも抜きにして見ると、 ピンクに塗られた家で快活に暮らす女たちは素敵に思えたが、 それ以上の感銘はない。 お父さんだって頑張ってるしリリィを愛しているに違いないのだが、 ここでは母のことを聞き出す情報源にすぎないのだ。

"The Runaways" を撮影中のダコタ・ファニングにも注目して見たが、 想像以上に子供で、 これでチェリー・カリーが演じられるのか心配になる^ ^ まあ お暇なら見てもらって、 どんなキービジュアルがいいか考えるのも一興だろう。


リリィ、はちみつ色の秘密 THE SECRET LIFE OF BEES (2008) 日本公開2009
監督 ジーナ・プリンス=バイスウッド 原作 スー・モンク・キッド 
クイーン・ラティファ ダコタ・ファニング ジェニファー・ハドソン 
アリシア・キーズ ソフィー・オコネドー  オフィシャルサイト&トレーラー 
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