4.01.2009
生きる道・・ 「ヘンリー・プールはここにいる」
イギリス王室御用達のヘンリー・プール、 背広の代名詞のようなこのテイラーと同姓同名の主人公は、 一証券マンだったが余命を宣告され、 この地に流れてくる。 カリフォルニアの平凡な街、 そこで家を買うシーンから始まるが、 値段は32万5千ドル。 広い庭付き一戸建てが3千万円くらいだろうか。 建物自体は平屋の寂れた木造で "壁は傷んでいるし もっと値切れるわよ" と不動産屋の女は言うが、 言い値でいいよ、 そのほうが君も仲介料が取れるだろ。 プールは投げやりにそう答える。
サンダンス出品作らしいが、 なかなかいい雰囲気の始まり方。 音楽の使い方なんかも独断に満ちていていい。 プールはスーパーで酒を大量に買い込んでは飲んだくれる毎日。 ある日、 隣人が裏庭に忍び込んで何かをしている。 家の壁にキリストの絵が浮かび上がっていると言うのだが、 プールにはシミにしか見えない。 またもう一方の隣の6才の少女は口がきけないのだが、 この壁に触ると口から 'ママ' という言葉が・・ そのことで少女の母親とプールの間に交流が生まれる。 娘は父親が出て行ってから口をきかなくなったと言う。
この地に流れ着いたかのよう雰囲気に反して、 実はプールはこの街出身であった。 昔住んでた家を訪ねるシーンがある。 家は空き家のままで、 自分が子供だった頃の写真を発見する。 彼はそれを持ち帰り、 壁に貼って ヘンリー・プールはここに 'いた' と書く。
いつも酒を買うスーパーのレジの女の子は目が悪かったが、 壁に触るとビン底の眼鏡が不要になる。 この奇跡騒動でプールの裏庭には行列ができる。 "あなたは壁に触ったの?" そう聞かれてプールは憤りを覚えるが、 やがて・・
ヘンリー・プールを演じるのは 'おとぼけ版トム・クルーズ' ことルーク・ウィルソンだが、 なぜかけっこう好きなんだよな。 二人が微妙に似ていると感じる人が他にもいないか検索してみたが、 英語圏で1件だけ。 "ルーク・ウィルソンとトム・クルーズは親戚関係?" "いやルークは人間だから それはあり得ないね" ・・
ジャンルは 'コメディ' ということになっているが、 あまり笑えず、 キリスト像から血や涙が流れた的ネタは懐かしいが、 思いつきの域を出ていない部分も多々。 にもかかわらず、 応援したくなる。 このへんのジャンルの映画にはもっと観客がいてもいいと思うのだが、 残念ながら未公開。 映画を志す人は、 アクション映画じゃなきゃ食っていけないんだよ、 と嘆く前に、 こういった作品にあと何が足りないのかを、 あるいは逆に何を持ち続けなければいけないのかを考えれば、 アカデミーやカンヌ、 あるいはアクションだけではない映画の楽しみ方を知る人が増えてくるのではないか。
少年サンデー、 マガジンが50周年ということだが、 マンガはそういう視点を持ち続けてきたように思う。 この映画はどこかマンガのようで、 しかもまだサブカルチャーだった頃のマンガのような、 微妙な味わい方のできる作品ではないかと。 「サイドウェイ」 が日本でリメイクされるらしいが、 見たくないな。 それより微妙な味わいのオリジナル、 レベルの高いインディペンデントの生きる道が開けてほしいものだ。
ヘンリー・プールはここにいる 〜壁の神様〜 (2008) 日本未公開
Henry Poole is Here 監督 マーク・ペリントン
ルーク・ウィルソン ラダ・ミッチェル レイチェル・シーファース
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