1.31.2009

怒りは憂いへ 「12人の怒れる男」



高い評価を得たTVドラマを、TV版と同じシドニー・ルメット監督とレジナルド・ローズ脚本のコンビで製作された劇場版が 「十二人の怒れる男 12 ANGRY MEN」 (1959) だそうだ。 昔、 日曜洋画劇場などで観た気がするが、 ほとんど覚えてないので、 またあらためて見てもいいかな。 しかしその前に、 ニキータ・ミハルコフがこの名作をリメイクしたというので、 こちらから見ることにする。

オリジナルはアメリカ映画だから、これがいかにロシアの話に生まれ変わっているかが見ものだが、まず殺人事件の被告である17才の少年が、チェチェン出身の少年になっている。 これはシリアスな変更だ。 審議がすべて終わり、 あとは12人の陪審員がいかなる評決を出すか。 その審議のプロセスを延々と描く映画なのだが、 オリジナルよりはるかに長い2時間40分の作品になっている。 だが時間とは不思議なもので、短かくても長〜く感じる映画もあれば、 長いと思っていたのに気づけばあと20分くらいになっている映画もある。 これはもちろん後者だ。

"怒れる・・" という邦題はオリジナルそのままだが、 もう怒ってはいないかもしれないので、 もうひと工夫ほしかったところだ。 ちなみに三谷幸喜などがからんだ 「12人の優しい日本人」 (1991) という作品もある。 日本でも裁判員制度が今年から始まることだし、 制度を考える上で、 あるは名作のパロディとして、 これも もっと注目されていいかもしれない。

この映画でもロシアのさまざな状況を風刺する物語が各陪審員の語りとして取り入れられる。 その物語に動かされ、 最初は有罪に票を投じていた陪審員が、 一人、 また一人と無罪に変わっていく。 その変化がまさにドラマなのだが、 審議以外のシーンも適度に盛り込まれ、 ミハルコフ版"12"では最後にもう一点、 皮肉な変更が施される。 それは見てのお楽しみだが、 ミハルコフ自身が陪審員2としてその最後の役割を演じている。 一見 '難しそう' 'カタそう' '長そう' に思える映画が、 実はそのどれもがあてはまらないことに驚いてみるのもいいのではないだろうか。

12人の怒れる男 12 (2007ロシア) 日本公開2008
監督・出演 ニキータ・ミハルコフ  オフィシャルサイト&トレーラー 
セルゲイ・マコヴェツキー セルゲイ・ガルマッシュ ヴァレンティン・ガフト 
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