7.26.2010

長身でホットなブロンド娘 talhotblond:



インターネットにまつわる殺人事件を追ったドキュメンタリー作品で、 事実は調べればわかることでもあり、 今日は完全ネタバレで書く。 日本公開はあるのかどうかすらわからないが、 もし見る予定があるならこのエントリーは片眼で流し読みしてほしい^ ^

ドキュメンタリーと言いながら、 殺された若い男が事件を振り返るモノローグで始まる。 その後も死人のナレーションで進行^ ^するが、 これくらいは許される演出か。 タイトルの talhotblond は tall (長身の) hot (ホットな) blond (ブロンド娘) という意味のハンドルネームだ。 勘のいい方はすでにここでお気づきだろう。 これはネカマか、 あるいはオバサンだろうと。

このタルホは本名ジェシー、 自称18才 女子高生。 そしてネットゲームやチャットを通して彼女に幻想を抱いてしまった男が二人。 一人は妻も子もいる中年男、 そしてもう一人は若い男で、 中年男とはリアルでも会社の上司と部下という関係。

中年男はハンドル名 marinesniper (海兵隊スナイパー)、 自称18才。 実際に元海兵隊の男ではあるが、 年齢はかなり詐称している^ ^ チャットでの会話はどんどんエスカレートし、 写真を送ったり、 パンティまで送ってもらう。 写真のジェシーはハンドル名通りのホットでピチピチのブロンドだが、 男は若い頃の写真を送って対応。 そして次の段階では、 スナイパーの父としてタルホにコンタクトを試みる。 息子のトムは死んだ、 生前は世話になった、 うんぬんかんぬん・・

しかし中年男のこのネットアクティビティは妻にバレ、 離婚するとの脅しによって淫行を辞めさせられる。 スケベなオヤジではあるが、 リアルでは娘たちのいい父親だった。 そんな男だからこそ海兵隊スナイパーと名乗り、 愛する君たちを守るために日夜戦っているなどと語る快感は、 しだいに幻想と現実の境界を曖昧にしていった。

タルホはその後、 意図したかのようにスナイパーの部下に接近する。 この若い男にとってジェシーは もろタイプで、 あることないことをまき散らして燃え上がる。 リアルで会った、 やった・・ これを聞いた中年男、 くすぶっていた幻想はふたたび焚きつけられ、 "今度は47才の男として もう一度 友達から始められないか" と。 ジェシーは答えた。 "いいわ。 でもトムを殺さないで。 勇敢な兵士は いつまでもあなたの中で、 私の理想の男性として永遠に生き続けてほしい"

ジェシーに再接近するうちに中年男は、 しだいに若い男が目障りになる。 しかしタルホは計画していたかのように、 ことあるごとに 若い男の話をし、 中年男の嫉妬心を煽る。 ついにある夜、 中年男は会社の駐車場で本当のスナイパーとなる。 若い男を撃ったのだ。 海兵隊時代に使っていた古い銃で。

男は逮捕され20年の刑となるが、 捜査が進むまでタルホが若い娘だと信じて疑わなかった。 しかし彼が恋した相手、 それは46才の、 ジェシーの母親だった。 母親だから娘の写真などはいくらでも入手できるし、 さらには娘に知られないでセクシーショットを隠し撮りしたりする変態ママだったのだ。 中年男は獄中で自殺を企てたり40kg以上も痩せたが、 これを聞いてアホらしくなったという。 アホらしい上に、 相手は自分と同じ病気だったことに苦笑い。

苦笑いで済まないのは殺された若い男の親だが、 ネットを取り締まる法案の制定に動く。 リアル・ジェシーはショックで、 その後 母親とは会ってないとのこと。

こういう事件があると何かとヤリ玉に上げられるインターネットだが、 これは幻想を運ぶメディアにすぎない。 ゲームやマンガが批判されることもあった。 テレビだってアイドルという幻想を量産してきたわけだし、 映画だって。 自分が定義する いい映画とは、 ヤクザ映画のように見た後 映画館を出たら、 思わず肩で風を切って歩いてしまうような映画なのだが、 幻想を現実に作用させるという点では全く同様に危険なウェポンだ。

そう考えると問題は、 欺すのが悪いのか、 欺されるのが悪いのかということになるだろう。 詐欺などでは欺すほうが悪いのだが、 この事件では欺され、 翻弄されてリアルな引き金を引いてしまった男だけが罪に問われた。 まんまと欺したジェシーの母親は当然ながら何の罪にも問われない。 だが娘からはキモがられ、 事件の情報は知れ渡るので今後 生きづらくなることは確かだろう。 しかしこのママはタフというか "インターネットの危険性を訴える本を出版したい" と のたまっているそうだ。

母親は離婚後、 娘と二人暮らしだったのだが、 若い娘を持つ母親にこうした悪意が芽生えることも微妙には理解できる。 そしてそれを誰よりも理解しているのが中年スナイパーなのだ。 この皮肉は何と言っていいのかわからないが、 ジェシーとして母が語った前述のセリフ、 若いトムを永遠に・・ という言葉にすべてが込められている。 このあたりは淡々としたドキュメンタリーながら微妙にぐっと来る。 インターネットにからむ近年の問題でありながら、 失われし若さへの羨望という文学的なテーマが隠されている気がする。

下のトレーラーはティーザー的すぎるが、 これしか見当たらない。 手法としては捜査当局から大量のログを借りて i love u などと書かれたチャットの記録をテキストで追ったり、 関係者へのインタビューが中心なので映像作品としてはやや地味かもしれない。 使われている音楽もサティのジムノペディだったりしてベタだが、 機会があればぜひご覧あれ。 アラフォー、 アラフィには無視できない何かがあるかも。




タルホットブロンド: (原題) talhotblond: (2009) 日本公開未定 
監督 バーバラ・シュローダー 
Talhotblond (Ws Ac3 Dol) [DVD] [Import]インポート [DVD]
Barbara Schroeder

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