1.09.2010

息子を愛してくれたひと 「鶴は翔んでゆく」



本日は50年代末のソビエト映画。 カンヌ・パルムドールにも輝く有名な作品で、 公開時は 「戦争と貞操」 という原題どおりのおカタいタイトルだった。 その後、 英語タイトルを直訳した邦題でDVD化され、 今回デジタル・リマスタリング版も出た。 内容はオリジナルのタイトルの方が言い表している。 恋人たちが戦争によって引き裂かれ、 愛する人の帰りを待てず別の男に・・

男が戦場で倒れるとき、 白樺の木々がぐるぐる回り、 そこへ彼女とのウェディングシーンが あるはずだった未来として重ねられる。 その後さまざまに模倣されることとなった表現とのこと。 しかしながら今回は、 そういった部分や後半の展開には触れず、 タチアナという女優だけにスポットを当てよう。 女優ありきの映画というのがすごく懐かしく思えたし、 事実パルムドールの受賞も彼女への功労賞とのニュアンスのキャプションがついているらしい。

一見、 オードリー・ヘプバーンとソフィア・ローレンを足して微妙グラマーにした感じのタチアナ・サモイロワだが^ ^ 前述の2名ほど有名ではなく出演作も3本ほどしかない。 しかしながら映画は実質、 シナリオや演出もさることながら、 彼女の魅力で成立していると言える。 とくに前半のややSぎみの無邪気な乙女像^ ^ 行進する戦車の合間をジグザグに縫って走る危険なシーン^ ^ ・・圧倒される。 貼り付けたトレーラーでも垣間見れるのでどうぞ。

雑踏をかき分けるシーンがちょうど2回あって、 出兵のときと帰還のとき。 多数のエキストラを使ったこのへんのシーンもよくできていているが、 彼女の人混みのかき分け方がまた、 ほとんど突き飛ばすようでパワフル^ ^ こういう前半があって後半の悲痛な表情も生きてくるわけだが、 どうせなら後半はゲッソリと痩せたほうがよかったかな。 戦場に散ったかもしれない恋人と同名の少年を救うシーンの動きも俊敏で はっとさせられる。 彼女はアクション女優だったのかもしれない。 。

義父になるはずだった人に肩を抱かれて去るラストシーンもいい。 古い映画は手法といいキャストといい、 盛りだくさんだなあ。 見入ってしまうと、 それが昨日のことのように感じられるのも不思議。 また強烈な女優に現れてほしいものだ。




鶴は翔んでゆく/戦争と貞操 (1957旧ソ連) 日本公開1958 
THE CRANES ARE FLYING/ЛЕТЯТ ЖУРАВЛИ  
監督 ミハイル・カラトーゾフ 脚本 脚本 ウィクトル・ロゾフ 
タチアナ・サモイロワ アレクセイ・バターロフ バシリー・メルクーリエフ 
※カンヌ パルムドール (サモイロワの演技に敬意を表して) 

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