9.19.2008

見上げるたびに懐かしいもの 「蒼空」




ねえ、 てっちゃん 東京って・・ 遠かね 


列車の窓から外を眺め彼女がポツンとつぶやくその九州弁で、 吸い込まれるように見てしまった。 オリジナルビデオっていうと安っぽさの代名詞みたいに軽く見がちだが、 今っぽいだけの劇場邦画作品より遙かに映画だった。

'蒼井そら' という、 かなりテキトーな芸名を持つ主演のこの方は、 いわゆるセクシーアイドルさんだが、 この作品の発案者でもあるらしい。 R15に指定されているが恐らく彼女が主演するビデオのなかでは大人しいのではないだろうか、 エロ目的では肩すかしを食らうはず。 そんなビジネス上のリスクを冒してまでやるべき何かが ここにはあったに違いない。


昔の日活ロマンポルノをはじめとする、 いわゆるピンク映画は、 日本映画においてはなぜか新人監督の登龍門的な位置づけでもあった。 森田芳光監督 「噂のストリッパー」、 黒沢清監督 「ドレミファ娘の血は騒ぐ」・・ だからピンクではあっても、 それは紛れもなく映画だったのだ。 さすがにピンク映画全盛の頃は知らないが、 普通の映画にもエッチなシーンのひとつや二つは必ず入っているものだったから、 それが物心ついたときに映画びいきになるきっかけでなかったと言えば嘘になるだろう。 そう、 映画というものはそもそもエロいものだったのだ。

テレビやビデオの時代になって日活が倒産したことからもわかるように、 ピンク映画はビジネス的なポテンシャルを失い、 あるいは映画そのものの斜陽が一時期はさかんに語られたものだが、 最近になって邦画が観客を取り戻してきたのは、 映画を斜陽化した張本人でもあるテレビ局が映画を制作するようになってから というのも皮肉なものだ。 興行成績は、 取り入れられたマーケティングのたまものなんだと思う。 ある意味、 それはもうすでに映画ではないのだろう。

そんな時代に、 AVからロマンポルノへ逆戻りしたかのような作品に出会ったものだから、 急にヘンな映画論になってしまってスマソ。 話を戻そう。 物語はようするに上京物語なのだが、 東京に出て一花咲かせる、 というのは高度成長期の日本の・・ ああ、 またループに陥りそうなのでやめとく^ ^




ミュージシャンを目指して上京し、 ヒモのような暮らしをしながらどんどん墜ちていく男。 かたや芸能プロダクションにスカウトされ、 自分自身を商品にして登りつめていく女。 語り尽くされたリソースを、 それでもまだ有効だろ? と確信犯的に言われているかのように、 古い男と古い女。 それでも空は、 百年前も千年前も変わってないじゃないか、 と言われるかのごとく。 。


蒼空 (2008日本) R15指定オリジナルビデオ
原案・出演 蒼井そら ブログ
原作・企画 倉科遼 監督 城定秀夫 音楽 タルイタカヨシ 
村中かずき 正田美里 今野梨乃 安堂サオリ 持田茜 

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