4.06.2012

生きた幽霊 LA CARA OCULTA



メジャー作品が続いたので、 このへんでいっちょマイナーなの 入れとくか^ ^ と、 いつもはホラーに走るところ、 これは違う。 (スチールはホラーっぽいが) 面白いとの噂を聞いたのだが・・

男は指揮者、 女は靴のデザイナーというスペインの熱いカップル。 男はコロンビアの楽団と契約し、 1年はそこで仕事をすることになる。 彼女もついていく。 コロンビアでの住居として借りたのが、 郊外のドイツ人所有の別荘。 ここには、 ナチの残党だった持ち主がいざというときを考え、 隠し部屋を用意していた。 鏡の裏側に完全防音の、 外の様子はマジックミラーとスピーカーでモニターすることのできる小さな部屋。 部屋の鍵穴も本棚の隅に隠されていた。

指揮者の男はコロンビアの女に弱いらしく^ ^ バイオリニストの女性とイチャついてしまう。 それを見た彼女は嫉妬、 独占欲の塊となって、 男を試そうと "探さないで" とのビデオメッセージを残して失踪する。 しかし実は隠し部屋に潜んでいて、 外の様子をうかがっている。 この部屋のことは彼女しか知らない。

しかし大きなミスがあって、 男の帰宅を察知して あわてて部屋に入った彼女は、 鍵を外に落としてきてしまう。 それがないと出られない。 人を試すなどと愚かなことをした罰か、 彼女は途方にくれながらも外の様子をミラー越しに見る。 しばらくは塞ぎ込んだり泣いたりしていた男だが、 やはりコロンビア女に弱いと見えて、 バーのウェイトレスを連れ込んでしまう。 目の前でその様子を見せつけられる隠し部屋の彼女。

しかしバーの女は勘がよく、 異様な気配に気づく。 最初は幽霊だと思ったが、 やがて理解する。 だが、 せっかく気づいてもらえたというのに、 相手が悪かった。 それは救世主ではなかった・・

とまあ、 ネタバレぎりぎりでそんな感じなのだが、 何となく女ばかりを説教いじめしているような、 そもそも女好きのこの男が悪いとも言え、 まあ監督の心の傷を反映してるのかなと^ ^ この手のシナリオが好きな人には力作に違いない。 あとラテン美人好きには たまらないのかもしれない。 。




ヒドゥン・フェイス (2011コロンビア・スペイン) 日本公開2012.9
LA CARA OCULTA/THE HIDDEN FACE
監督 アンドレス・バイズ 
マルティナ・ガルシア クララ・ラゴ キム・グティエレス 

4.05.2012

はじめから失われているもの 「マリリン 7日間の恋」



見たかった作品だが、 見てみたら期待したものとは違った気もした。 だが意外にさわやかな後味。 マリリン・モンローについては正直よく知らないが、 ミシェル・ウィリアムズがモンロー役に決まったと聞いたときは、 おお、 と言いながら、 違う気もしていた。

本編を見てもやはり、 両親の愛を知らずに育ったマリリンと、 しっかり愛されてきてそうで、 思いっきり健康そうなミシェルは真逆という印象を受ける。 しかしそこはメイクや演技でマリリンになっているところが見所の一つではあるだろう。 イギリスっぽい大御所のキャスティングは泊づけでしかないような気もしたが、 助監督役のエディ・レッドメインや衣装係のエマ・ワトソンがみずみずしい。

誰かを本当に愛していて、 100%本気でそのことを伝えたつもりが、 その瞬間に1%くらいは自分の言葉に嘘が混じってると感じたことはないだろうか。 まあヘンな言い回しだが、 では100%は嘘なのかというとそうではないし、 伝え方に照れがあったかというとそうでもない。 なのに1%はどこに消えていったのか。 そのことをじっくり考察してみてもいいが、 答えはなかなか出ないだろう。 そんな感じの映画だ^ ^

猪突猛進で映画界に飛び込み、 甘んじて使いっ走りに奔走するコリン。 だが初仕事の作品はいきなり大スター、 マリリン・モンローをイギリスに招いてのローレンス・オリヴィエ主演兼監督の大作。 しかもマリリンに気に入られ、 名誉あるお守役かと思えば深入りしてしまう。 憧れのスターとキスシーンどころかベッドシーンまで・・

舞い上がりながら冷静に対応し、 かつマリリンの心境を理解しているコリン。 その瞬間は本気なのに、 すぐに終わりが来ることも理解している。 切り取られた一瞬を永遠にスクリーンに投影しつづけるコリンはまさに映画人と言えるし、 不安定なメンタルを抱えながら、 最終的にはフィルムに輝きを焼き付けるマリリンもまさにムービースターだった。

マリリンがメソッドアクティングの指導を受けていたというのも興味深いが、 それがローレンス・オリヴィエの演技論とぶつかる。 企画が規格にハマってくれない。 セリフに "too" を付けるか付けないかで もめるなども面白いエピソードだ。 創造的なぶつかりあいの結果オリヴィエはその後、 監督業をあきらめて役者に専念することとなる。

オリヴィエの奥さんがヴィヴィアン・リーで、 当時42才で "もうアナタには なれないの" とマリリンに語るところなども興味深い。 ふらっと劇場へ足を運んでも楽しめる作品、 映画ファンが見れば1.5倍は楽しめる映画と言えるだろうか。



マリリン 7日間の恋 MY WEEK WITH MARILYN (2011イギリス・アメリカ) 3/24~
監督 サイモン・カーティス  公式サイト・予告 象のロケット 
ミシェル・ウィリアムズ ケネス・ブラナー エディ・レッドメイン 
エマ・ワトソン ジュリア・オーモンド ドミニク・クーパー 
ジュディ・デンチ

4.03.2012

動物園を買った! 「幸せへのキセキ」



「動物園を買った」 ?! というタイトルと上のキレイなポスター、 監督はキャメロン・クロウということで並々ならぬ期待を持って鑑賞。 総じて優しい作品だったが、 エサ代の膨大な請求書など動物園という特殊な空間の運営が垣間見れて面白い。 "Whatever" (どうでもいい) は20世紀で終わり、 というセリフが象徴するように、 新しい人生観に触れた気にもなる。

しかしまたしても邦題には苦言を呈さなければならない^ ^ 何だ、 その古くさいカタカナ使いは? 動物園を買うという驚きをすべてゴワサンにして、 それらしくまとめて終わり? 携帯よりも何よりも、 こういうセンスにガラパゴスを感じるなあ。 映画ファンたるもの、 こういうものはキッパリ拒否していこうよ^ ^

実話ベース。 妻を亡くした夫、 母を亡くした兄妹が、 人生のスタートオーバーのために新しい家を探す。 そして何を間違えたか、 庭付きならぬ動物園付きの家を買ってしまう。 そんなものが買える遺産があったのだが、 動物だけでなく、 そこで働く人間までも買ったわけだから、 すぐに破産することになるぞと言われる。

だが幸いにも、 そこで働く人は動物たちとこの場所を本当に愛し、 またその動物園 (正確には、 一部の動物が放し飼いされているアニマル・パーク) は地域からも愛されていた。 マット・デイモン演じるベンジャミン・ミーは、 持ち前のまっすぐな心で立ち向かい、 園再開にこぎつける。 その過程で家族は悲しみを乗り越えて成長する、 みたいな話。

母が死んでからというもの、 不気味な絵を描き続けて学校も退学になってしまう息子役のコリン・フォードは、 交互にアップになると笑ってしまうくらいデイモンによく似ている。 難を言えばスカヨハがあまりパッとしない。 その代わりと言ってはなんだが、 エル・ファニングがみずみずしい。

ラストの回想シーン、 父が母に出会ったときの20秒の勇気。勇ましく語る父を微笑ましく見守る兄妹。 父のセリフはこうだ。 "Why would an amazing woman like you even talk to someone like me?" すると母の答えは・・ 乞うご期待。


幸せへのキセキ We Bought A Zoo (2011) 日本公開2012.6/8 公式サイト・予告 
監督 キャメロン・クロウ  象のロケット 
マット・デイモン スカーレット・ヨハンセン トーマス・ヘイデン・チャーチ 
パトリック・フュジット アンガス・マクファーデン コリン・フォード 
エル・ファニング ステファニー・ショスタク ジョン・マイケル・ヒギンズ 

4.02.2012

銃弾2発分 「ワイルド7」



春っぽくない、 4月の1本め。 原作やアニメも遠い記憶には残っているが、 小さかったんで白バイものか何かだと思ってた。 こんな話だったのか^ ^ 変わった名前ばかりの7名も、 そういや、 そんな名前だったなと。 感想は概ね言われている通りでエントリーしなくていいかと思ったが、 セカイが殉死?するときに意外な感銘を受けたので、 忘れないようメモしとけと。

大切な人を守りたいと思うほどに自分の非力さを確かめることになるが、 ようするに守るとは、 最後は権力や巨悪から銃弾2発分の盾になること。 その程度しかできないし、 その程度ならできる。 そんなつまらないことを、 あっさり死んでいくセカイを見て考えさせられたなあ^ ^

深田さんがあらたな7人めとなって、 もくろみ通りシリーズ化してもらいたいが 「踊る大走査線」 的エリートのなかの不良意識に重きを置かないで、 もっとスタイリッシュなほうへ振ってほしい。 そして次回こそは三池監督で^ ^

ワイルド7 (2011日本)
原作 望月三起也 監督 羽住英一郎 
瑛太 椎名桔平 丸山隆平 阿部力 宇梶剛士 平山祐介 松本実 
要潤 本仮屋ユイカ 深田恭子 中井貴一 

3.18.2012

恋の不発弾 「ワン・デイ」



ベストセラー原作の、 エマとデクスターの23年の恋。 ロマンチックなのか、 じれったいのか よくわからないが、 時間の経過とともに老けてゆく二人は、 それなりに感慨深くもあった。

ロンドンの大学生だった頃、 不発に終わった二人。 エマはわざとらしくサエないメガネッ子だが、 坊ちゃん育ちのデクスターにはスペシャルだった。 あまりに本気だったために、 怖じ気づいたのかもしれない。 それからずっと '友達以上、 恋人未満' な関係は続く。 デクスターは自分のキャラを勘違いし、 テレビに出ておバカタレントに徹するが人気はイマイチどころかヒンシュクのほうが大きい。 大好きな母にも冷たい目で見られる。

テレビはやめたが他に何もできず、 結婚、 離婚。 娘のいいパパにはなれたが、 その間エマは当初の目標通り作家となり、 パリで暮らしている。 ジャズミュージシャンの恋人もいるが、 落ちぶれた果てたデクスターと再会したとたん、 何かがエマのなかに蘇る。 そしてハリウッドの息がかかった映画にしては珍しく、 ハッピーエンディングとは言い切れない終わり方。

退屈なような、 しんみりさせられるような・・ ジューンブライドな季節、 しかし梅雨でもある時期の日本公開にふさわしいかもしれない。 つぶらすぎる瞳のハサウェイは期待通りにコケティッシュで、 スクール水着からチャイナドレス姿まで披露してくれる。 裸で泳ぐシーンもあるが、 よくは見えない^ ^ 微妙にこなれていないブリティッシュアクセント、 あちらにも方言指導などはあるのだろうか。 自転車に乗って、 片手で昔ながらの方向指示を出すのも可愛い。

スタージェスはどうかというと、 可もなく不可もなく。 情けなさは十分に出せてたと思うし、 二人のあいだに漂う、 相性の良すぎる空気感みたいなものも楽しく味わえる。 凝った日付の出しかたなどにもロネ・シェルフィグっぽさがあるのだろうか、 いずれにしても、 いわゆるハリウッドスタイルのラブストーリーとはひと味違って悪くないかもしれない。 乞うご期待。



ワン・デイ 23年のラブストーリー (2011アメリカ・イギリス) 日本公開2012.6/23
ONE DAY  公式サイト・予告 象のロケット 
監督 ロネ・シェルフィグ 
原作・脚本 デビッド・ニコルズ 主題歌 エルビス・コステロ 
アン・ハサウェイ ジム・スタージェス パトリシア・クラークソン 
ケン・ストット ロモーラ・ガライ レイフ・スポール