9.13.2009

才能のゆくえ 「イングロリアス・バスターズ」





約1週間 更新が止まってしまったのは、 これを見にアメリカまで行ってたから・・というのはウソだが^ ^ お待ちかねのタランティーノの新作、 ついにと言うか、 やっと見ることができた。 日本公開は11月後半とのことでタイムラグは少ない方だが、 やっぱり世界最'遅'だ。 でも、 もうどうでもいいや。 こっちの興奮が鎮まった頃に騒ぎ出してくれ。 とにかく俺は見た。

約2時間半と長めだが、 あっという間だった。 予想どおり濃い、 あるいは同時に薄っぺらい。 が、 ハンパなく魅せてくれる。 普通に見ても相当面白いと思うが、 それでも見終わって微妙に物足りない気がするのは、 ある種の 'ないものねだり' だろうか。 今回、 脚本のコピーも見ることができて、 追ってみると細かく書き込んであって、 ところどころ筆が走るがゆえのミスタイプなども見受けられる。 この Inglourious Basterds というタイトルも、 わざとスペル間違いをしたようなセンスなのだろう。 だがアドリブなどは ほとんどない。 一字一句、 タランティーノの言葉とイメージで、 いろんな元ネタがあるにせよ、 これを一人で書き上げたかと思うと あらためて才能を見せつけられるようだった。 そして脚本の1/3くらいは本編には出て来ない。 つまりカットされたのだろう。 だから、 本当はもっと長い物語のダイジェストのようなところが どうしてもある。 それが物足りなさの原因かもしれない。

"才能は人それぞれだ" みたいなことを、 SSのハンス・ランダは言う。 彼の才能は、 鷹でありながらネズミの意識でユダヤを追いつめていく、 自称 '探偵' の能力。 しかし不幸にもそれが花開いたのは、 狂った世界の中だった。 最後の最後まで周到な計算と、 探し物に遭遇する才能を駆使しながらも報われることはない。 ランダを演じるクリストフ・ワルツは、 一人芝居のように その架空の悲しいキャラを演じ上げる。

ハンスに追われるショシャーナ (そう聞こえるが、 ヨーロッパ風にはショザンナかもしれない) は、 すごくいい表情でスクリーンをヌーベルバーグさながらの風情にしてくれる。 彼女に好意を寄せるのは皮肉にもナチの英雄で、 あしらってもあしらって子犬のように まとわりついてくる。 かたくなな彼女はあるとき一瞬 優しさを覗かせてしまうが、 これが命取りに。 パリの空気を集約したような このメラニー・ロランもグッドキャスティングだ。




古くて渋めの戦争映画に、 モノクロームの時代のパリを混ぜ、 スパイ映画の 'スパイ'スを効かせたような。 子細な元ネタの考察は誰かにまかせるとして、 今回はまずキャスト陣の演技力に圧倒される。 上の演技派二人の周辺を、 タランティーノらしいB級キャラが固める。 ブラッド・ピット演じるアルド・レインは、 わざとらしいまでの南部男で、 いかにもと言えばいかにもキャラだが、 "アパッチ" というあだ名がつく味付けが施される。 タランティーノのお友だちで ホラー監督のイーライ・ロスが演じるバット男ドノヴィッツ、 ドイツ兵でありながらゲシュタポを13人殺したスティグリッツなど、 バスターズのエグいキャラたちも当然ながら見どころ。

ヒトラーは意外にオーソドックスで、 ここでのゲッベルスは かなり気さくな人柄。 ふと登場するマイク・マイヤーズ、 あるいは 「キル・ビル」 に引き続きタランティーノ作品に顔を出したジュリー・ドレフュスなどもなかなかの存在感だ。 パリのカフェでゾラーの後ろに座っている人も、 ただのエキストラなのだが妙に気になる。

往年の映画スターの名前が飛び交う物語にふと、 デビッド・ボウイがかかるプレミアの夜。 このへんがまた、 いいんだよな。 映画館での映画による復讐というのはタランティーノらしい素敵な思いつきだし、 GAMAAR という架空の映画館まで造形してくれ見ごたえたっぷり。 おどろおどろしく、 かつ幾分 いつもより叙情的な今回のタランティーノだが、 ベタで新しいコメディのセンスも見せてくれる。 イタリア人になりすましたレインら3名様の '達者な' イタリア語でのやりとり、 ナチに囲まれた座席で他の客の前を出たり入ったりするシーンは、 うれしいオマケと言える。

一幕一幕、 言い表しきれない感想が残るが、 結局は見てもらったほうが早い。 最後に、 残虐シーンや死にっぷりは何とも生々しくてブラボー! あと2ヶ月も待てる?



イングロリアス・バスターズ (2009) 日本公開11/20予定 ※世界最遅 公式サイト  INGLOURIOUS BASTERDS 脚本・監督 クエンティン・タランティーノ 
Lt. Ald Rain: ブラッド・ピット Col Hans Landa: クリストフ・ワルツ  Shosanna: メラニー・ロラン Fredrick Zoller: ダニエル・ブリュール  Sgt:Donny Donowitz: イーライ・ロス Sgt. Hugo Stiglitz: ティル・シュヴァイガー  Archie Hicox: マイケル・ファスベンダー Perrier LaPadite: ドゥニ・メノーシェ  Bridget von Hammersmark: ダイアン・クルーガー General Ed Fenech: マイク・マイヤーズ Pfc. Smithson Utivich: B・J・ノヴァク  Marcel: ジャッキー・イドー Francesca Mondino: ジュリー・ドレフュス  Joseph Goebbels: シルヴェスター・グロート Adolf Hitler: マルティン・ヴトケ 
Soundtrack: "Cat People (Putting Out The Fire)" by David Bowie その他の選曲をこちらを参照。 試聴可 Inglourious Basterds [SOUNDTRACK]
イングロリアス・バスターズ [DVD][DVD]

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